志布志事件 通称: 鹿児島県議選買収事件

結末 2007年3月、検察が控訴せず、鹿児島地裁が被告人12人全員に言い渡した無罪判決が確定

発生日 2003年4月14日(平成15年) 2003年(平成15年)の事件 / 4月14日に起きた事件
経過 発生から23年6か月 2007年3月1日の確定から19年7か月
発生場所 鹿児島県 曽於郡志布志町(現在の志布志市)
種別 汚職・政治事件
状態 判決確定
  • 事件が変えた法律・制度氷見事件とともに、2008年の警察庁「取調べ適正化指針」と、捜査部門以外が取調べを監督する国家公安委員会規則の制定につながった。
  • 冤罪と再審 — 無罪が確定した事件と再審請求買収会合の自白をもとに住民らが起訴されたが、2007年に全員の無罪が確定した。2015年の国家賠償判決は、警察の取調べと検察の起訴の違法を認めた。
2003年4月の鹿児島県議会議員選挙をめぐり、鹿児島県警が、曽於郡志布志町(現在の志布志市)の山あいの集落の住民らを、買収の会合を開いて現金を配ったとする公職選挙法違反の容疑で逮捕・起訴した事件。2007年2月23日、鹿児島地裁は、会合のうち2回は候補者にアリバイが成立し、自白も信用できないとして、被告人12人全員に無罪を言い渡し、無罪が確定した。取調べで家族の名前などを書いた紙を踏ませた「踏み字」も問題となり、警察庁は2008年に取調べの適正化指針を策定した。
志布志事件を象徴する概念イラスト
※イメージ画像(生成AIによる概念イラストであり、実際の現場・関係者を写したものではありません)
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県議選と捜査の始まり

2003年4月13日に投開票された鹿児島県議会議員選挙で、曽於郡区から立候補した新人が当選した。鹿児島地裁の判決によると、県警は選挙の直後から、陣営の関係者らが有権者に酒や現金を配ったという情報をもとに関係者を任意で取り調べた。4月22日には、住民の1人を焼酎と現金を配った疑いで逮捕したが、この件は起訴されなかった。その後、取調べを受けた集落の住民の中から、候補者が出席した会合で現金が配られたという供述が出てきた。
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4回の「買収会合」

検察官は、当選した県議らが、志布志町の山あいの集落にある住民の家で計4回の会合を開き、住民らに現金を配ったとして、県議や住民らを公職選挙法違反の罪で起訴した。起訴された分だけで配られたとされる現金は合計191万円にのぼった。判決によると、この集落は町の中心部から相当に離れた山間部にあり、わずか7世帯しかない小さな集落だった。会合の日時は起訴状では「2月上旬ころ」などとされ、検察官が「2月8日」などと日付を示したのは第42回公判になってからだった。起訴された被告人のうち1人は、審理中の2005年5月24日に亡くなった。

踏み字

捜査の初期、県警の警部補は、取調べを受けていた男性に対し、家族の名前などを書いた紙を足元に並べ、両手で男性の両足首をつかんで紙を踏ませた。この「踏み字」について、2007年1月に鹿児島地裁が県に賠償を命じた。県警は2007年2月21日、取調官を減給10分の1、3か月の懲戒処分とした。福岡地検は2007年9月19日、元警部補を特別公務員暴行陵虐の罪で起訴し、福岡地裁は2008年3月18日、懲役10月、執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。

全員無罪の判決

2007年2月23日、鹿児島地裁は被告人12人全員に無罪を言い渡した。判決は、日付が示された1回目と4回目の会合について、県議にアリバイが成立し、会合の事実は存在しなかったといわざるを得ないとした。そのうえで、自白の中に、あるはずもない事実がさもあったかのように具体的かつ迫真的に表現されていることは、追及的・強圧的な取調べがあったことをうかがわせるとした。判決は、多額の現金が配られたとされながら供与金の原資が全く解明されていないことや、7世帯の集落で買収会合を開くことに選挙運動としてどれほどの実効性があるのか甚だ疑問であることも指摘した。判決が引用した被告人の訴えによると、取調官からは「認めれば早く帰れる」などと言われていた。検察は控訴せず、無罪が確定した。

取調べの適正化

2007年3月8日、警察庁長官は当時の鹿児島県警本部長に厳重な注意をした。国家公安委員会は2007年11月1日に「警察捜査における取調べの適正化について」を決定し、これを受けて警察庁は、志布志事件と富山県氷見市の事件の問題点を検証し、2008年1月24日に「警察捜査における取調べ適正化指針」をまとめた。指針は、取調べに関する不適正な行為につながるおそれのある行為を類型化し、捜査を担当しない総務・警務部門が取調べを監督する仕組みを設けるものだった。2008年3月には国家公安委員会規則「被疑者取調べ適正化のための監督に関する規則」が制定され、4月には犯罪捜査規範も改正された。

国家賠償訴訟

元被告人と遺族は国と県に損害賠償を求めて提訴した。2015年5月15日、鹿児島地裁は、県警の捜査と検察の起訴などの違法を認め、国と県に連帯して計5,980万円の支払いを命じた。判決は、警察官が執拗な尋問を繰り返し、不相当な誘導で供述を強制したことや、体調不良を訴えた原告の帰宅を認めずベッドで取り調べたことなどを違法とし、検察官についても、もはや到底有罪判決を期待し得なかった状況の下で注意義務を尽くしておらず、過失があると認めた。5月28日、鹿児島地検と県警は控訴しないと明らかにし、県警本部長は記者会見で謝罪した。原告側も控訴せず、判決は確定した。

審理・経過の流れ

  1. 逮捕 2003年4月22日
  2. 判決 2007年2月23日 +1,403日
  3. 判決 2007年3月 +6日
  4. 起訴 2007年9月19日 +202日
  5. 判決 2008年3月18日 +181日
  6. 判決 2015年5月15日 +2,614日

経過

  1. 2003年4月13日
    平成15年

    その他 鹿児島県議選の投開票、曽於郡区で新人が当選

  2. 2003年4月14日
    平成15年

    捜査 県警が陣営関係者の任意の取調べを始める

  3. 2003年4月22日
    平成15年

    逮捕 住民の1人を焼酎と現金を配った疑いで逮捕

    起訴はされなかった

  4. 2005年5月24日
    平成17年

    その他 被告人の1人が審理中に死亡

  5. 2007年2月21日
    平成19年

    その他 踏み字の取調官を減給の懲戒処分に

  6. 2007年2月23日
    平成19年

    判決 鹿児島地裁が被告人12人全員に無罪判決

    アリバイ成立、自白の信用性を否定

    鹿児島地方裁判所 (事件番号: 平成15年(わ)第217号ほか)

  7. 2007年3月
    平成19年

    判決 検察が控訴せず無罪判決が確定

  8. 2007年9月19日
    平成19年

    起訴 踏み字の元警部補を特別公務員暴行陵虐罪で起訴

  9. 2008年1月24日
    平成20年

    その他 警察庁が取調べ適正化指針をまとめる

  10. 2008年3月18日
    平成20年

    判決 福岡地裁が元警部補に有罪判決

    懲役10月、執行猶予3年

    福岡地方裁判所

  11. 2015年5月15日
    平成27年

    判決 国家賠償訴訟で鹿児島地裁が国と県に賠償を命じる

    計5,980万円

    鹿児島地方裁判所

  12. 2015年5月28日
    平成27年

    その他 地検と県警が控訴しないと表明し、県警本部長が謝罪

出典・公的資料

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「志布志事件」事件JP、2026年10月27日閲覧。https://jiken.jp/cases/2003-shibushi-case/
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更新履歴

  • 2026年10月15日 初版公開

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