カネミ油症事件 通称: カネミ油症

結末 1982年5月、工場長が上告を取り下げ、禁錮1年6月の有罪が確定。社長は一審の無罪が確定していた

発生日 1968年10月10日(昭和43年) 1968年(昭和43年)の事件 / 10月10日に起きた事件
経過 発生から58年 1982年5月1日の確定から44年5か月
発生場所 福岡県 北九州市(カネミ倉庫本社工場)。被害は福岡県・長崎県など西日本一帯
種別 事故
状態 判決確定
被害  負傷者 2,395人
  • 事件が変えた法律・制度仮払金の返還を免除する特例法(2007年)と、被害者への施策を総合的に進める救済法(2012年)が、この事件のために制定された。
  • 薬害・食品被害事件米ぬか油にPCBとダイオキシン類が混入した食品被害。国が仮払金の返還を求めた問題は2007年の特例法で解決が図られ、2012年の救済法で医療費の支払いや健康実態調査が制度化された。
1968年(昭和43年)、北九州市のカネミ倉庫が製造した米ぬか油に、製造工程で熱媒体として使われていたPCB(カネクロール)が混入し、それを食べた人に皮膚の吹き出物や色素沈着などの健康被害が西日本一帯で広がった事件。10月10日に新聞が「正体不明の奇病」として初めて報じ、届け出た人は約1万3千人に上った。油にはPCBのほか、ダイオキシン類も含まれていた。厚生労働省が認定した患者は2026年3月末現在で累計2,395人(死亡者を含む)。刑事裁判で工場長の有罪が確定し、2012年には被害者を支援する救済法が制定された。
カネミ油症事件を象徴する概念イラスト
※イメージ画像(生成AIによる概念イラストであり、実際の現場・関係者を写したものではありません)
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鶏の大量死と「奇病」の報道

1968年2月から3月にかけて、カネミ倉庫が米ぬか油を製造する過程で出る副産物「ダーク油」を配合した飼料を食べた鶏が、九州・山口などで大量に死んだ。農林省の担当者は同年11月の国会で、死んだ鶏はブロイラーだけで40万羽ほどに上ったと説明し、この時点で厚生省には連絡しなかったことを「はなはだ残念であった」と述べている。同じ年の6月以降、九州大学病院の皮膚科には、顔などに吹き出物ができる患者が家族単位で受診していた。10月3日、福岡県大牟田市の患者が自宅のカネミ倉庫製の米ぬか油を保健所に持ち込み、厚生省の説明では、保健所が10月4日に初めて事態を把握した。10月10日には新聞の夕刊が、大牟田市や福岡市、北九州市で正体不明の奇病が続出していると初めて報じ、厚生省は米ぬか油の販売停止と患者の報告を指示した。厚生省は11月29日の国会で、届け出た患者は約1万3千人、典型的な症状のある確症患者は287人、疑症患者は276人と説明している。
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原因 ― PCBとダイオキシン類

九州大学などでつくる油症研究班は、1968年11月、米ぬか油の脱臭工程で熱媒体として使われていた鐘淵化学工業(現カネカ)製のPCB(商品名カネクロール)が油に混入したことが原因だと発表した。厚生省の対策本部は同月の中間結論で、中毒の原因となった油は2月上旬に製造された製品が主体で、脱臭工程で使われていた塩化ジフェニール(PCB)による公算が最も大きいとしたが、混入の経路については断定的な結論は出ていないと国会で説明した。PCBが混入した経路は、脱臭装置の配管にあいた穴から漏れたとする説と、工事の際の作業ミスによるとする説があり、民事裁判でも判断が分かれた。その後の研究で、油にはPCBに加え、ダイオキシン類の一種であるポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)なども含まれていたことがわかり、全国油症治療研究班は、油症をPCBとダイオキシン類の複合中毒による症候群としている。2004年には、診断基準に血液中のダイオキシン類の濃度が加えられた。

刑事裁判

1970年3月、検察はカネミ倉庫の社長と工場長を業務上過失傷害の罪で起訴した。1978年3月24日の一審判決は、工場長に禁錮1年6月の実刑を言い渡し、社長は無罪とした。社長の無罪は検察が控訴しなかったため確定した。工場長は控訴したが、福岡高等裁判所は1982年1月25日に控訴を棄却し、工場長は同年5月に上告を取り下げて有罪が確定した。

民事訴訟と仮払金の問題

被害者は、カネミ倉庫、PCBを製造した鐘淵化学工業、国を相手取って各地で損害賠償を求める訴訟を起こした。国の責任については判断が分かれ、福岡高裁は1984年3月16日の判決で国の責任も認め、国は約25億円を仮払いした。1985年の福岡地裁小倉支部の判決も国の責任を認めたが、1986年5月15日の福岡高裁判決は鐘淵化学工業と国の責任を否定した。1987年3月20日、最高裁判所の勧告を受けて、原告団と鐘淵化学工業の和解が成立し、原告は国に対する訴えを取り下げた。ところが、訴えを取り下げたことで、被害者には国から受け取った仮払金を返す義務が生じた。国会答弁によると、原告829人に支払われた仮払金は約27億円で、2006年度末時点で約17億円が返還されていなかった。この仮払金の返還が問題となり、2007年6月、一定の収入基準を満たす被害者の返還を免除する特例法が議員立法で制定された。

救済法の制定

2012年8月29日、「カネミ油症患者に関する施策の総合的な推進に関する法律」が議員立法で成立し、9月5日に公布・施行された。この法律は、国の責務や、原因事業者であるカネミ倉庫が患者の医療費を支払う責務などを定めた。参議院の附帯決議は、同居していた家族の認定基準の見直しと、国・カネミ倉庫・患者による定期的な協議の場を設けることを求めた。これを受けて、国は2012年11月に施策の基本指針を定め、同年12月には、事件当時に認定患者と同居していた家族を患者とみなす基準を診断基準に加えた。国は患者の健康実態調査を毎年行い、協力した人に健康調査支援金として19万円を支給している。2025年度の協力者は1,243人だった。

認定患者と現在

厚生労働省によると、2026年3月31日現在の累計認定患者数は2,395人で、すでに亡くなった人も含まれる。届け出た人の数は資料によって異なり、1968年11月の国会答弁では約1万3千人とされている。2007年の特例法と2012年の救済法は、いずれもこの事件のために設けられた法律である。国・カネミ倉庫・患者の三者による協議は現在も続けられている。

審理・経過の流れ

  1. 事件・事故 1968年10月10日
  2. 起訴 1970年3月24日 +530日
  3. 判決 1978年3月24日 +2,922日
  4. 判決 1982年1月25日 +1,403日
  5. 判決 1984年3月16日 +781日
  6. 判決 1986年5月15日 +790日

経過

  1. 1968年3月18日
    昭和43年

    その他 農林省がダーク油を配合した飼料の使用停止を指示

    鶏の大量死を受けた措置。厚生省には連絡しなかった

  2. 1968年10月4日
    昭和43年

    その他 大牟田市の保健所が米ぬか油による被害を把握

  3. 1968年10月10日
    昭和43年

    事件・事故 新聞が「正体不明の奇病」として初めて報道

    厚生省が米ぬか油の販売停止を指示

  4. 1968年11月4日
    昭和43年

    捜査 油症研究班がPCB(カネクロール)を原因と発表

  5. 1970年3月24日
    昭和45年

    起訴 カネミ倉庫の社長と工場長を業務上過失傷害罪で起訴

  6. 1978年3月24日
    昭和53年

    判決 一審で工場長に禁錮1年6月、社長は無罪

    社長の無罪は検察が控訴せず確定

  7. 1982年1月25日
    昭和57年

    判決 福岡高裁が工場長の控訴を棄却

    福岡高等裁判所

  8. 1982年5月
    昭和57年

    その他 工場長が上告を取り下げ、有罪が確定

  9. 1984年3月16日
    昭和59年

    判決 福岡高裁が民事訴訟で国の責任を認める

    国は約25億円を仮払い

    福岡高等裁判所 (事件番号: 昭和53年(ネ)第180号・第211号)

  10. 1986年5月15日
    昭和61年

    判決 福岡高裁が別の訴訟で鐘化と国の責任を否定

    福岡高等裁判所

  11. 1987年3月20日
    昭和62年

    その他 最高裁の勧告で原告団と鐘淵化学工業が和解

    原告は国への訴えを取り下げ

  12. 2007年6月8日
    平成19年

    その他 仮払金返還債権の免除特例法が公布される

    平成19年法律第81号

  13. 2012年9月5日
    平成24年

    その他 カネミ油症被害者救済法が公布・施行される

    平成24年法律第82号

  14. 2012年12月3日
    平成24年

    その他 診断基準に同居家族の基準を追加

出典・公的資料

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「カネミ油症事件」事件JP、2026年10月28日閲覧。https://jiken.jp/cases/1968-kanemi-yusho/
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更新履歴

  • 2026年10月12日 初版公開

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