証券口座乗っ取り事件

現在 2026年3月、相場操縦で起訴された会社と代表取締役の男に東京地裁が有罪判決を言い渡し、その後確定

この事件は捜査中です。 判決が確定していない被告人・被疑者は、有罪判決が確定するまで無罪と推定されます。記述は2026年10月19日時点で確認できた公的資料・報道に基づいており、今後の審理により変わる可能性があります。

発生日 2025年3月(令和7年) 2025年(令和7年)の事件
経過 発生から1年7か月
発生場所 東京都
種別 サイバー犯罪
状態 捜査中 公訴時効早見表で制度を確認できます
実在する証券会社を装った偽サイトなどで盗まれたIDやパスワードが悪用され、ネット取引の口座が第三者に乗っ取られて株式などが勝手に売買された事件。被害は2025年3月から急増した。金融庁が2026年10月9日に公表した暫定値では、2025年1月から2026年9月までに不正アクセス1万9,252件、不正取引1万642件が報告されている。不正アクセスを使った相場操縦では中国籍の男2人が逮捕され、うち1人が代表取締役を務める会社とともに起訴されて、2026年3月に東京地裁で有罪判決を受け、確定した。金融庁は監督指針を改正し、フィッシングに耐性のある多要素認証の必須化を証券会社に求めた。
証券口座乗っ取り事件を象徴する概念イラスト
※イメージ画像(生成AIによる概念イラストであり、実際の現場・関係者を写したものではありません)
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偽サイトで盗まれたIDによる売買

金融庁によると、この事件の被害は、実在する証券会社のウェブサイトを装った偽のサイト(フィッシングサイト)などで顧客のログインIDやパスワードが盗まれ、それを使ってインターネット取引サービスに不正にログインされたものだった。多くの場合、犯人は被害者の口座を勝手に操作して口座にある株式などを売り、その代金で国内外の小型株などを買い付けた。取引のあと、被害口座には買わされた小型株などが残る。金融庁の伊藤豊監督局長は2025年5月16日の衆議院財務金融委員会で、犯人が先に自分の口座で同じ小型株を買っておき、他人の口座の資金で大量に買わせて株価が上がったところで売り抜け、売却益を得ているのではないかと推察されると答弁した。金融庁は、フィッシングだけでなく、マルウェア(ウイルスなど)による情報の盗み取りにも注意するよう呼びかけている。被害はどの証券会社でも起こり得るとしている。
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2025年春の急増

被害は2025年1月と2月にも報告されていたが、3月から急増した。加藤勝信金融担当大臣は国会で、3月下旬ごろ、身に覚えのない取引があったという顧客からの被害申告が証券会社に急増したと説明した。金融庁は4月3日、ウェブサイトで注意を呼びかけた。金融庁が2026年10月9日に公表した暫定値によると、不正アクセスは2025年2月の97件から3月に2,321件へ増え、4月には5,490件と最も多くなった。4月の不正取引は3,033件で、不正取引があった証券会社は4月に10社、5月に16社だった。2025年1月から2026年9月までの累計は、不正アクセス1万9,252件、不正取引1万642件、売却金額約4,372億円、買付金額約3,837億円である。ただし金融庁は、この金額は被害口座での不正な売買の代金を合計したもので、同じ口座で取引が繰り返されると積み上がるため、顧客の損失額とは一致しないと注記している。数字は発生日ごとの暫定値で、まだ判明していない被害がある可能性もあるという。

立件された相場操縦

警察庁によると、2025年11月、警察庁サイバー特別捜査部と警視庁などは、中国籍の男らを金融商品取引法違反(相場操縦)と不正アクセス禁止法違反の疑いで逮捕した。報道によると、逮捕は11月28日だった。警察庁の説明では、男らは自分が管理する口座で特定の株を先に大量に買い、氏名不詳の者と共謀して他人の口座に不正アクセスし、その口座の株を売って得た資金で同じ株を大量に買わせて株価を上げた。そのうえで手持ちの株を高値で売り、差額を利益にしていたとされる。報道によると、逮捕されたのは中国籍の男2人で、うち38歳の男は川崎市の貴金属輸出入会社の代表を務めていた。12月18日、証券取引等監視委員会は、この相場操縦について、その会社と代表取締役を東京地方検察庁に告発した。告発の内容は、2025年3月17日、会社名義のほか10の名義の口座で高値を買い上がる注文を続けるなどして東京証券取引所に上場する株の株価を上げ、その株価で会社名義の株を売り付けたというものだった。代表取締役の男と会社は相場操縦の罪などで起訴され、2026年2月17日の初公判で起訴内容を認めた。2026年3月23日、東京地裁は代表取締役に懲役3年・執行猶予5年と罰金400万円、会社に罰金400万円を言い渡し、両者に連帯して追徴金7,807万3,200円を科した。判決はその後確定した。

約款にかかわらない補償の申し合わせ

被害の補償も大きな問題になった。2025年5月2日、日本証券業協会は、10社が補償の方針を申し合わせたと発表した。フィッシング詐欺などによる不正アクセスで第三者が顧客の資産を使って売買し、被害が出た場合について、各社の約款などの定めにかかわらず、一定の被害補償をするという内容だった。対象は2025年1月以降に起きた被害である。10社は、SMBC日興証券、SBI証券、大和証券、野村證券、松井証券、マネックス証券、みずほ証券、三菱UFJ eスマート証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、楽天証券だった。補償は、被害状況を精査したうえで、顧客のIDやパスワードの管理の状況や、証券会社側の対策などを考え合わせ、個別の事情に応じて対応するとされた。加藤大臣は5月9日の衆議院財務金融委員会で、この方針は一定の評価はできると述べた。金融庁の石田晋也監督局長は11月20日の参議院財政金融委員会で、補償の水準や方法は各社の経営判断で決まるとしたうえで、金融庁として補償の進み具合をフォローアップしていると答弁した。

監督指針の改正と多要素認証の必須化

行政と業界は、ログインの守りを固める方向に動いた。報道によると、日本証券業協会は2025年4月25日、ログイン時の多要素認証を必須にする証券会社58社を公表した。7月には金融庁と警察庁が局長などの連名で、日本証券業協会を含む金融関係の協会に、なりすましメールを防ぐ技術(DMARC)の普及、フィッシングサイトの閉鎖活動、パスキーの導入の促進を要請した。金融庁は7月15日に「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」の改正案を公表して意見を募り、10月15日から改正後の指針を適用した。改正後の指針は、ログインや出金、出金先の銀行口座の変更など重要な操作のときに、パスキーやPKI(公開鍵基盤)による認証など、フィッシングに耐性のある多要素認証を備え、初期設定で必須にすることを求めている。メールやSMSにログインのリンクを載せないことや、認証に続けて失敗したときのアカウント・ロック、ログイン時の挙動の分析による検知も盛り込まれた。被害が出たときは、補償を含めて被害回復に向けて真摯に対応する態勢を整えることも求めた。

被害のその後と捜査

金融庁は2025年11月18日の日本証券業協会との意見交換会で、多要素認証の必須化は原則として2026年6月末までの実施を求めているとしたうえで、10月は被害が9月から増加に転じたとして早急な導入を求めた。2026年4月16日には、金融庁・警察庁と金融機関が、官民一体で多要素認証を広める広報を始めた。2026年10月9日公表の暫定値では、不正取引は2026年3月にも121件あったが、7月は5件、9月は2件だった。2025年の1年間については、警察庁の資料が金融庁などの数字として不正アクセス1万7,668件、不正取引9,824件、不正売買金額約7,408億円を挙げている。一方、金融庁の2026年10月9日公表の暫定値で同じ年を足し合わせると、不正アクセス1万7,717件、不正取引9,861件となり、両者は一致しない。報道によると、2026年10月にはGoogleやAppleのアカウントを乗っ取り、そこに保存されたパスキーなどを悪用した疑いのある事案を受けて、証券会社が注意を呼びかけた。警察庁は、サイバー特別捜査部が全国の事案の情報を集めるなどして、各地の警察の捜査に貢献しているとしている。

審理・経過の流れ

  1. 事件・事故 2025年3月
  2. 事件・事故 2025年3月17日 +16日
  3. 逮捕 2025年11月28日 +256日
  4. 判決 2026年3月23日 +115日

経過

  1. 2025年3月
    令和7年

    事件・事故 証券口座への不正アクセスが急増

    不正アクセスは2月の97件から3月に2,321件へ(2026年10月9日公表の暫定値)

  2. 2025年3月17日
    令和7年

    事件・事故 複数名義の口座を使った相場操縦

    のちに告発される事件の取引日

  3. 2025年4月3日
    令和7年

    その他 金融庁がウェブサイトで注意喚起

  4. 2025年4月25日
    令和7年

    その他 日本証券業協会が多要素認証を必須にする58社を公表

    日付は報道による

  5. 2025年5月2日
    令和7年

    その他 日本証券業協会と10社が被害補償の方針を申し合わせ

    約款などの定めにかかわらず一定の補償をする

  6. 2025年7月
    令和7年

    その他 金融庁と警察庁が金融関係の協会に対策を要請

    DMARC、フィッシングサイトの閉鎖、パスキーの導入

  7. 2025年7月15日
    令和7年

    その他 金融庁が監督指針の改正案を公表

  8. 2025年10月15日
    令和7年

    その他 改正監督指針の適用

    フィッシングに耐性のある多要素認証の必須化を求める

  9. 2025年11月28日
    令和7年

    逮捕 相場操縦などの疑いで中国籍の男らを逮捕

    中国籍の男2人。うち1人は、のちに告発・起訴される会社の代表取締役。日付は報道による。

  10. 2025年12月18日
    令和7年

    捜査 証券取引等監視委員会が会社と代表取締役を告発

    金融商品取引法違反(相場操縦)の疑い

  11. 2026年3月23日
    令和8年

    判決 東京地裁が会社と代表取締役に有罪判決

    代表取締役(逮捕された中国籍の男の1人)に懲役3年・執行猶予5年と罰金400万円、会社に罰金400万円、追徴金7,807万3,200円。判決はその後確定した。

    東京地方裁判所

  12. 2026年4月16日
    令和8年

    その他 官民一体で多要素認証を広める広報を開始

出典・公的資料

一次資料 3件 判決文・白書・調査報告書・法令など、原典にあたれる資料を掲載しています。

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「証券口座乗っ取り事件」事件JP、2026年10月28日閲覧。https://jiken.jp/cases/2025-securities-account-takeover/
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更新履歴

  • 2026年10月19日 逮捕された男と有罪となった代表取締役の関係、起訴・初公判の経過を追記
  • 2026年10月16日 初版公開

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