上三川強盗殺人事件 通称: 栃木強盗殺人事件

発生日 2026年5月14日(令和8年)
経過 発生から3か月
発生場所 栃木県 河内郡上三川町(上神主)
種別 強盗
状態 公判中
被害 死者 1人  負傷者 2人
2026年(令和8年)5月14日、栃木県河内郡上三川町の民家に押し入った少年らが住人を襲い、69歳の女性が死亡、同居の息子2人が負傷した事件。実行役は「闇バイト」で集められた犯行当時16歳の少年4人で、互いに面識のないまま秘匿性の高い通信アプリで指示を受けていた。現場で指示していたとされる20代の夫婦は強盗殺人などの罪で起訴され、実行役の少年4人も家庭裁判所から検察官送致(逆送)されて全員が刑事裁判にかけられることになった。主導役とみられる男は国外に逃亡し、国際手配されている。
上三川強盗殺人事件を象徴する概念イラスト
※イメージ画像(生成AIによる概念イラストであり、実際の現場・関係者を写したものではありません)

事件の経過

2026年5月14日午前9時20分ごろ、栃木県河内郡上三川町上神主の民家に複数の人物が押し入った。住人の69歳の女性は刃物で刺されて死亡し、死因は出血性ショックとされる。同居していた40代の長男と30代の次男もバールで殴られ、骨折などの重傷を負った。飼い犬も殺されており、のちに動物愛護法違反も罪名に加えられている。 室内で金品が物色された形跡があり、県警は当初から強盗目的の犯行とみて捜査した。押し入った人物はいずれも顔を隠しており、犯行に要した時間は10分に満たなかったとされる。犯行後は用意されていた車で逃走したが、うち1人は徒歩で現場を離れ、まもなく警察官に発見された。

実行役はどう集められたか

逮捕された実行役は、いずれも犯行当時16歳で、神奈川県相模原市や川崎市に住む高校生ら4人だった。4人は事件の前から互いに面識があったわけではなく、供述には「当日初めて会った人もいる」というものが含まれる。 少年らはSNS上のいわゆる「闇バイト」の募集を通じて集められたとされ、一部は「普通のアルバイトだと聞かされていた」「高速道路のサービスエリアで凶器を渡されたときに初めて強盗だと分かった」と供述したと報じられた。犯行を断ろうとした際に「やらなければ家族を殺す」と脅されていたという供述もある。指示は、一定時間で通信履歴が消える秘匿性の高いアプリを介して伝えられ、犯行の最中も現場の少年が通話でリアルタイムの指示を受け、周囲に伝えていたとみられる。逃走に使われた車は第三者名義のものだった。 こうした勧誘の構造は、この事件に特有のものではない。警察庁が2023年にまとめた広報啓発資料は、少年が「闇バイト」に加担するまでの典型的な流れを、①SNSで「高額報酬」等を検索して応募する、②匿名性の高いアプリを強制的にインストールさせられる、③身分証明書や家族の情報など個人情報を送らされる、④加担を拒めばその個人情報を使って脅される、という4段階として整理し、犯行グループが少年を「使い捨て」にする実態を警告していた。本件で確認された経緯は、この4段階とほぼ重なる。

捜査の経緯

事件の前から、現場周辺では4月ごろから不審な人物や車が目撃されており、県警はパトロールを重ねていた。5月6日には、盗まれたナンバープレートを取り付けた不審な車に同乗していた男が逮捕されている。また4月8日には次男宅で窃盗があり、被害者宅の住所が記された書類が盗まれていた。犯行グループが事前に被害者側の情報を把握していた可能性が指摘されている。 事件当日、徒歩で逃走していた少年1人が発見されたことが端緒となり、その供述から他の実行役が特定された。少年4人は5月14日から16日にかけて相次いで強盗殺人の疑いで逮捕された。現場で指示役を務めていたとされる横浜市の20代の夫婦は、防犯カメラの映像を次々にたどる捜査によって足取りが追跡され、5月17日に羽田空港と神奈川県内のホテルでそれぞれ確保された。 一方、グループを主導していたとみられる当時48歳の男については、5月27日に逮捕状が出され、5月29日に公開手配、6月5日に国際手配された。この男は事件後に成田空港から出国し、中国を経由して東南アジアに逃れたとみられている。さらに5月30日には、少年らを勧誘したリクルーター役として、当時18歳の少年が職業安定法違反の疑いで逮捕された。

少年法上の扱いと刑事裁判へ

少年の事件は、成人の刑事事件のように検察官が起訴・不起訴を判断するのではなく、原則としてすべて家庭裁判所に送られる(全件送致主義)。実行役の少年4人も、6月26日に家庭裁判所へ送致された。 ただし少年法は、故意の犯罪行為によって被害者を死亡させた罪について、犯行時16歳以上の少年は原則として検察官に送致しなければならないと定めている(いわゆる原則逆送)。7月16日、横浜家庭裁判所川崎支部は実行役の少年1人について検察官送致を決定し、続いて横浜家庭裁判所も残る少年について同様の決定をした。川崎支部の決定では、金銭目的で犯行に加わったこと、凶器や被害者宅の資産に関する情報を事前に得ていたことから計画的な犯行であると指摘され、刑事処分が相当と判断された。この少年は、無免許運転による事故の示談金を工面しようとして闇バイトの紹介を求めたとされる。 逆送された少年4人は7月下旬から順次起訴され、7月31日に残る2人が起訴されて、実行役全員が刑事裁判にかけられることになった。罪名は強盗殺人、強盗殺人未遂、住居侵入、動物愛護法違反の4罪で、強盗殺人罪は裁判員裁判の対象となる。現場指示役とされる夫婦は、これに先立つ6月29日に強盗殺人などの罪で起訴されている。リクルーター役の少年も7月13日に検察官送致され、7月22日に職業安定法違反の罪で起訴された。 なお、犯行時に少年だった被告人については、少年法が本人と推知できる報道を禁じているため、公判が始まったあとも実名や写真は報じられない。

闇バイト強盗と制度的な背景

警察庁は、暴力団のように構成員がはっきりした従来型の犯罪組織とは異なり、SNSや求人サイトを通じて緩やかに結びついたメンバーが役割を細分化し、その都度入れ替わりながら犯罪を実行する集団を「匿名・流動型犯罪グループ」と位置づけている。2024年の警察白書はこれを特集に据え、2023年1月の狛江市の強盗殺人事件をはじめ広域的な強盗事件が相次いだこと、実行犯がSNSや求人サイトで募集され、匿名性の高い通信手段で指示役とやり取りしていたことを指摘した。同白書によれば、この手口によるとみられる強盗・窃盗などの事件は、2021年9月から2024年3月までに22都道府県で78件発生している。 政府も対策を重ねてきた。2023年3月には「SNSで実行犯を募集する手口による強盗や特殊詐欺事案に関する緊急対策プラン」が決定され、2024年12月17日の犯罪対策閣僚会議では「いわゆる『闇バイト』による強盗事件等から国民の生命・財産を守るための緊急対策」がまとめられた。この緊急対策は、募集広告に募集者の氏名・住所・連絡先や業務内容、就業場所、賃金の表示がない場合は職業安定法違反にあたることを通知で明確化すること、プラットフォーム事業者に削除基準へ反映させること、そして捜査員が身分を秘して募集に応じる「仮装身分捜査」を早期に実施することなどを掲げている。本件でリクルーター役の少年に適用された職業安定法違反は、この流れの上にある罪名である。 警察庁の集計では、仮装身分捜査は2025年中に13件実施され、強盗予備で1件2人、詐欺未遂で3件3人を検挙し、これらを含む7件の被害を未然に防いだとされる。それでも本件のように、面識のない少年が短期間で集められ、死者を出す犯行に至る事例は防ぎきれていない。実行役が逮捕されても、指示役の上位にいる人物が国外にいるため全容の解明が難しいという構図も、この事件で改めて示された。

審理・経過の流れ

  1. 事件・事故 2026年5月14日
  2. 逮捕 2026年5月16日 +2日
  3. 逮捕 2026年5月17日 +1日
  4. 逮捕 2026年5月30日 +13日
  5. 起訴 2026年6月29日 +30日
  6. 起訴 2026年7月31日 +32日

経過

  1. 2026年5月14日
    令和8年

    事件・事故 上三川町の民家に押し入り住人3人を殺傷

    69歳の女性が死亡し、同居の息子2人が重傷を負った。飼い犬も殺された。

  2. 2026年5月16日
    令和8年

    逮捕 実行役の少年4人を強盗殺人の疑いで逮捕

    5月14日から16日にかけて、犯行当時16歳の少年4人が相次いで逮捕された。

  3. 2026年5月17日
    令和8年

    逮捕 現場指示役とされる20代の夫婦を逮捕

    防犯カメラの映像をたどる捜査で追跡され、羽田空港と神奈川県内のホテルで確保された。

  4. 2026年5月30日
    令和8年

    逮捕 リクルーター役の少年を職業安定法違反の疑いで逮捕

    当時18歳の少年が、実行役の少年らを勧誘したとして逮捕された。

  5. 2026年6月5日
    令和8年

    捜査 主導役とみられる男を国際手配

    5月27日に逮捕状が出され、5月29日の公開手配を経て国際手配された。事件後に出国したとみられている。

  6. 2026年6月26日
    令和8年

    その他 実行役の少年4人を家庭裁判所に送致

    少年事件の全件送致主義に基づき、横浜家庭裁判所などに送致された。

  7. 2026年6月29日
    令和8年

    起訴 現場指示役とされる夫婦を強盗殺人などの罪で起訴

    宇都宮地方検察庁

  8. 2026年7月16日
    令和8年

    その他 実行役の少年について検察官送致(逆送)を決定

    金銭目的の計画的な犯行であり刑事処分が相当と判断された。以後、実行役の少年4人全員が逆送された。

    横浜家庭裁判所川崎支部

  9. 2026年7月31日
    令和8年

    起訴 実行役の少年4人全員を起訴し刑事裁判へ

    強盗殺人、強盗殺人未遂、住居侵入、動物愛護法違反の4罪。強盗殺人罪は裁判員裁判の対象となる。

    宇都宮地方検察庁

出典・公的資料

一次資料 5件 判決文・白書・調査報告書・法令など、原典にあたれる資料を掲載しています。

関連する法律用語

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「上三川強盗殺人事件」事件JP、2026年9月8日閲覧。https://jiken.jp/cases/2026-kaminokawa-robbery-murder/

関連事件

  • 2023年1月19日 闇バイトで集められた実行役による強盗で死者が出た先行事例。警察白書が匿名・流動型犯罪グループの特集で最初に挙げた事件

    狛江市強盗致死事件

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更新履歴

  • 2026年8月25日 初版公開

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