博多駅前ストーカー殺人事件 通称: 博多駅前女性刺殺事件

結末 2024年7月、検察・弁護側とも控訴せず、男の懲役20年の判決が確定した

発生日 2023年1月16日(令和5年) 2023年(令和5年)の事件 / 1月16日に起きた事件
経過 発生から3年9か月 2024年7月12日の確定から2年3か月
発生場所 福岡県 福岡市博多区(博多駅前2丁目の路上)
種別 殺人
状態 判決確定
被害 死者 1人  負傷者 0人
  • 事件が変えた法律・制度事件を受け、警察庁が禁止命令を受けた加害者全員に警察が連絡して近況を把握する取り組みを試行し、2024年3月の通達で全国に広げた。
2023年(令和5年)1月16日夕方、福岡市博多区博多駅前2丁目の路上で、退勤してJR博多駅へ向かっていた会社員の女性(当時38歳)が、元交際相手の男(当時31歳)に包丁で多数回刺されて殺害された事件。男は女性の相談を受けた警察からストーカー規制法に基づく警告と禁止命令を受けていた。福岡地裁の裁判員裁判は2024年6月、起訴状にあった待ち伏せは認めなかったものの、女性の後を追った行為を禁止命令に違反したつきまといと認定し、別の傷害事件と合わせて懲役20年(求刑懲役30年)を言い渡し、判決は確定した。事件をきっかけに、警察庁は禁止命令を受けた加害者全員に警察が連絡して近況を把握する取り組みを全国で始めた。
博多駅前ストーカー殺人事件を象徴する概念イラスト
※イメージ画像(生成AIによる概念イラストであり、実際の現場・関係者を写したものではありません)
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事件の発生と逮捕

2023年(令和5年)1月16日午後6時13分ごろ、福岡市博多区博多駅前2丁目の路上で、会社員の女性(当時38歳)が、元交際相手の男(当時31歳)に包丁で刺されて殺害された。女性は退勤し、JR博多駅へ歩いて向かう途中だった。 判決によると、男は午後6時6分ごろ、傘を差して歩いていた女性を偶然見かけて「おい」などと声をかけ、そこから約7分間、約173メートルにわたって女性の後を追った。男は謝罪を求めるなどして女性と口論になり、女性が110番通報しようとしたことで激高して、刃体の長さ約24.4センチの包丁で女性の頭部や背部、後頸部などを多数回突き刺した。女性は多数の刺し傷による失血で死亡した。 男は現場から逃走したが、福岡県警は2日後の1月18日、男を殺人容疑で逮捕した。福岡地検は2月8日、男を殺人罪などで福岡地裁に起訴した。男はその後、2022年8月に博多区内の路上で面識のない男性を殴って重傷を負わせたとする傷害容疑でも再逮捕され、ストーカー規制法(禁止命令)違反の疑いでも追送検された。
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事件前の警告と禁止命令

判決によると、男と女性は2022年4月に知り合って交際を始めたが、女性は同年10月22日ごろに交際の解消を告げた。女性は警察に相談し、男は10月24日、警察署でストーカー規制法上の警告を口頭で受け、今後女性に連絡や待ち伏せなどをしないとする申立書を作成した。 しかし男はその後も、かつらで変装して女性の勤務先が入るビルに行き、再び連絡を取り合うよう求めたり、女性の携帯電話に「何年でも恨んだるから覚えとれや」などのメッセージを送ったりした。こうした行為を理由に、男は11月26日、警察署長からストーカー規制法5条3項に基づく禁止命令(緊急禁止命令)を受けた。判決は、男がそれから事件の日まで女性と接触を図ることはなかったと認めている。

裁判員裁判と「待ち伏せ」の判断

福岡地裁の裁判員裁判では、傷害事件を先に審理して判決を出す区分審理が行われ、2024年3月26日に傷害事件について有罪の部分判決が出された。殺人などの事件の初公判は6月17日に開かれ、男は「刺したことは間違いないですが待ち伏せしたことは違います」と述べて殺人罪を認め、ストーカー規制法違反の罪は否認した。 起訴内容では、男は女性を待ち伏せしたとされていた。争点は、男が約3分間立ち止まっていた行為が待ち伏せにあたるか、男の行為が恋愛感情やそれが満たされなかったことへの怨恨を充足する目的によるものかだった。判決は、約3分間という比較的短い時間立ち止まっていたというだけでは、間違いなく待ち伏せしていたとは認められないとした。一方で、女性の後を追った行為はストーカー規制法上の「つきまとい」にあたるとして、禁止命令に違反したストーカー行為の罪が成立すると判断した。

判決と確定

検察側は有期懲役の上限である懲役30年を求刑し、弁護側は懲役17年が妥当と主張した。福岡地裁(冨田敦史裁判長)は2024年6月28日、男に懲役20年の判決を言い渡した。この刑は、殺人に加え、傷害、銃刀法違反、ストーカー規制法違反の罪を合わせたものである。 判決は、男が少なくとも17回突き刺し、女性がうつ伏せに倒れた後もなお刺すことをやめなかったことを「強固な殺意に基づく執拗かつ残忍な犯行」と指摘した。動機については、女性が警察に相談したことで自分がストーカーと扱われ生活全般が窮地に陥ったと考えた男の逆恨みによるものだとし、警察への相談や声をかけられた際の女性の対応に「何ら落ち度がないことは明らか」と述べた。一方で、当初から殺害を企てて接触したものではなく計画性はうかがわれないとし、同種事案の中で「比較的重い部類に属する」と位置づけたうえで、検察官の求刑を量刑の基礎とすることは相当でないと判断した。 控訴期限の7月12日までに検察・弁護側とも控訴せず、判決は確定した。

事件後の警察の取り組み

共同通信によると、警察庁はこの事件を受け、禁止命令後の対応を強化するため、2023年8月から2024年1月まで10都道府県警で、禁止命令を受けた加害者全員に連絡する取り組みを試行した。2023年12月末時点の試行では、禁止命令が出されていた396件のうち177件で連絡を入れ、そのうち2件がその後の命令違反で摘発された。 警察庁は2024年3月18日、禁止命令を受けた加害者全員に連絡を取って近況を把握するとともに、精神的治療の有効性などの紹介を徹底するよう全国の警察に通達した。それまでは、加害者に連絡するかどうかを各都道府県警が個別に判断していた。2025年11月21日の衆議院内閣委員会で国家公安委員長は、博多駅前の事件などを踏まえ、2024年3月から警察が禁止命令等を受けた加害者の近況を把握してリスク評価をする取り組みを行っていると答弁した。2026年4月の参議院内閣委員会では警察庁が、この事件で加害者をカウンセリング等の機関につなげる取り組みの強化などが課題となったと説明した。

審理・経過の流れ

  1. 事件・事故 2023年1月16日
  2. 逮捕 2023年1月18日 +2日
  3. 起訴 2023年2月8日 +21日
  4. 判決 2024年3月26日 +412日
  5. 公判 2024年6月17日 +83日
  6. 判決 2024年6月28日 +11日

経過

  1. 2022年10月24日
    令和4年

    その他 女性の相談を受け、警察が男にストーカー規制法上の口頭警告

    男は今後連絡や待ち伏せをしないとする申立書を作成した

  2. 2022年11月26日
    令和4年

    その他 警察署長が男にストーカー規制法5条3項に基づく禁止命令

    勤務先への接触やメッセージの送信を理由とする緊急禁止命令

  3. 2023年1月16日
    令和5年

    事件・事故 博多駅前の路上で会社員の女性が元交際相手の男に刺殺される

    午後6時13分ごろ。男は約7分間女性の後を追った末に刺した

  4. 2023年1月18日
    令和5年

    逮捕 福岡県警が男を殺人容疑で逮捕

  5. 2023年2月8日
    令和5年

    起訴 福岡地検が男を殺人罪などで起訴

    福岡地方裁判所

  6. 2024年3月18日
    令和6年

    その他 警察庁が禁止命令を受けた加害者全員への連絡を全国の警察に通達

    2023年8月から10都道府県警で試行していた

  7. 2024年3月26日
    令和6年

    判決 福岡地裁が別件の傷害事件について有罪の部分判決

    区分審理による

    福岡地方裁判所 (事件番号: 令和5年(わ)第262号)

  8. 2024年6月17日
    令和6年

    公判 福岡地裁で裁判員裁判の初公判。男は殺人を認め、待ち伏せは否認

    福岡地方裁判所 (事件番号: 令和5年(わ)第61号)

  9. 2024年6月28日
    令和6年

    判決 福岡地裁が懲役20年の判決(求刑懲役30年)

    待ち伏せは認めず、追従をつきまといと認定した

    福岡地方裁判所 (事件番号: 令和5年(わ)第61号、第262号)

  10. 2024年7月12日
    令和6年

    その他 控訴期限までに検察・弁護側とも控訴せず、懲役20年の判決が確定

出典・公的資料

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「博多駅前ストーカー殺人事件」事件JP、2026年11月4日閲覧。https://jiken.jp/cases/2023-hakata-station-stalker-murder/
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更新履歴

  • 2026年11月4日 初版公開

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