佐世保女子高生殺害事件 通称: 佐世保高1同級生殺害事件

結末 2015年7月、長崎家裁が少女を医療(第3種)少年院に送致する保護処分を決め、逆送を回避した

発生日 2014年7月26日(平成26年) 2014年(平成26年)の事件 / 7月26日に起きた事件
経過 発生から12年3か月 2021年11月4日の確定から5年
発生場所 長崎県 佐世保市(少女が1人暮らしをしていたマンション)
種別 殺人
状態 終結
被害 死者 1人  負傷者 0人
2014年(平成26年)7月26日夜、長崎県佐世保市で、県立高校1年の女子生徒(当時15歳)が、1人暮らしをしていた同級生の少女(当時15歳)のマンションで殺害された事件。少女は翌27日に殺人容疑で逮捕された。長崎家裁は2015年7月、「刑罰による抑止効果がない」として、少女を医療(第3種)少年院に送致する保護処分を決めた。事件の約1カ月半前に、少女を診ていた精神科医が県の児童相談所に通報していたのに、組織として対応されていなかったことが、県議会や県の有識者検討会で検証された。
佐世保女子高生殺害事件を象徴する概念イラスト
※イメージ画像(生成AIによる概念イラストであり、実際の現場・関係者を写したものではありません)

事件の経過

2014年(平成26年)7月26日午後8時ごろ(逮捕容疑)、長崎県佐世保市内のマンションで、県立高校1年の女子生徒(当時15歳)が、同級生の少女に後頭部を金属製の工具で何度も殴られ、ひも状のもので首を絞められて殺害された。少女は4月から親元を離れ、このマンションで1人で暮らしていた。2人は中学校も同じだった。 行方を捜していた警察官が、27日午前3時20分ごろにマンションの入り口付近で少女を見つけ、部屋で遺体を発見した。長崎県警は同日、少女を殺人容疑で逮捕した。司法解剖の結果、死因は窒息死で、遺体の一部は切断されていた。 知事は29日の定例記者会見で、「決して起こってはならない痛ましい事件」だと述べた。そのうえで、過去の事件を踏まえて命の大切さなどを育む教育に力を注いできたのに再び事件が起きたとして、県民におわびした。

事件前の経緯と県の検証

少女は事件前の3月2日、父親の頭や顔を金属バットで殴っていた(のちに殺人未遂の非行事実として家裁に送られた)。県と県教育委員会が8月に県議会に出した中間報告書によると、高校の校長は4月25日にこの殴打を把握したが、警察には通報しなかった。小学校から中学校への進学時には問題行動の情報が引き継がれたが、中学校から高校へは引き継がれていなかった。県教委は9月、父親が学校関係者に口止めしていたことも報告した。 6月には、少女を診ていた精神科医が県の佐世保こども・女性・障害者支援センター(児童相談所)の担当者に電話し、「放置すれば誰かを殺すのではないか」と伝えていた。精神科医は、警察や学校の関係者でつくる要保護児童対策地域協議会(要対協)での検討を求めた。しかし職員は「要対協で支援するケースとは思えない」と断り、幹部も追認した。県議会では、児童相談所がこの電話を「相談」ではなく制度に関する照会として扱い、今後の支援方針を検討する受理会議にかけていなかったと説明された。 児童相談所の対応を検証した県の有識者検討会は、2014年11月、児童相談所の幹部による部下への日常的なパワハラが、通報の放置を招いたとする見解でほぼ一致した。県は2015年2月5日、児童相談所の幹部らに児童福祉制度への理解不足があったとする報告書を県議会に提出した。報告書は、少女は要対協の対象だったとしている。

家裁送致と少年審判

長崎地検佐世保支部は2014年8月11日、少女を精神鑑定するため鑑定留置した。2015年1月20日には、父親への殺人未遂容疑で少女を再逮捕した。長崎地検は1月30日、少女を長崎家裁に送致し、刑事裁判にかけるための検察官送致(逆送)を求める「刑事処分相当」の意見を付けた。家裁は2月20日に第1回の少年審判を開き、2月23日からは家裁による精神鑑定のための鑑定留置が行われた。 長崎家裁(平井健一郎裁判長)は2015年7月13日、少女を医療(第3種)少年院に送致する保護処分を決定し、逆送を回避した。少年法は、16歳以上が故意に人を死なせた事件は原則として逆送するよう定めている。しかし事件は、少女が16歳になる数日前に起きていた。家裁は、少女が「刑事罰の可能性が高くなると知っていて直前に実行した」とも指摘した。 決定は、少女を重度の自閉症スペクトラム障害(ASD)と認定し、素行障害も併発しているとした。ただし「ASDが非行(犯行)に直結したわけではなく、環境も影響した」と述べている。そのうえで、「刑罰による(再犯の)抑止効果がない。長期間の治療教育で矯正の効果が期待できる」と判断した。少年院を出た後も「生涯にわたって対応を継続する必要がある」とした。

収容継続とその後

長崎家裁は2021年8月、元少女について2024年までの収容継続を認める決定をした。福岡高裁も11月4日付で元少女側の抗告を棄却した。少年院の収容は原則23歳未満までだが、第3種少年院は精神に著しい障害がある場合、26歳になるまで延長が認められている。元少女側が期限までに再抗告しなかったため、決定は確定した。法務省によると、23歳を超えての収容継続は少なくとも平成以降で初めてだった。長崎新聞は2024年8月、元少女がこの夏で26歳になり、異例の長期収容が終わると報じた。 被害生徒の父親は、事件から1年の2015年7月に会見し、「治療を受けた上で罰を受ける制度にしてほしい」と少年法の改正を訴えた。

社会への影響と再発防止

佐世保市では2004年にも、小学6年の女児が同級生を殺害する事件が起きていた。10年の間に、同じ市で子どもが同級生の命を奪う事件が2度起きたことになる。2014年の県議会では、「10年を経て、再び同様の事件が繰り返され」たことを受けて、県の対応を問う質問が出た。 事件の翌年から、県の児童相談所は相談を24時間受け付けるようにした。また、相談の一つ一つを受理会議にかけて組織的に検討する態勢をとった。県教委は2015年、非行などのある子どもを把握したときに、児童相談所や警察と連携して要対協の開催を求める手順などをまとめた「学校と関係機関との連携マニュアル」を作成した。2人が通っていた高校では、毎年7月に事件を振り返る集会が開かれている。

審理・経過の流れ

  1. 事件・事故 2014年7月26日
  2. 逮捕 2014年7月27日 +1日

経過

  1. 2014年3月2日
    平成26年

    その他 少女が父親の頭や顔を金属バットで殴る

    のちに殺人未遂の非行事実として家裁に送致された。

  2. 2014年6月10日
    平成26年

    その他 精神科医が県の児童相談所に電話で通報するが、組織として対応されず

    児童相談所は「相談」ではなく制度に関する照会として扱った。

  3. 2014年7月26日
    平成26年

    事件・事故 佐世保市のマンションで高校1年の女子生徒が同級生に殺害される

    死者1人。

  4. 2014年7月27日
    平成26年

    逮捕 長崎県警が同級生の少女を殺人容疑で逮捕

  5. 2014年8月11日
    平成26年

    捜査 長崎地検佐世保支部が少女を鑑定留置

  6. 2014年8月22日
    平成26年

    その他 県と県教委が中間報告書を県議会に提出

    中学から高校へ問題行動が引き継がれていなかったことなど。

  7. 2015年1月30日
    平成27年

    その他 長崎地検が少女を長崎家裁に送致(刑事処分相当の意見)

    長崎家庭裁判所

  8. 2015年2月5日
    平成27年

    その他 県が児童相談所の対応に関する報告書を県議会に提出

    児童相談所幹部らの児童福祉制度への理解不足を指摘。

  9. 2015年7月13日
    平成27年

    その他 長崎家裁が少女を医療(第3種)少年院に送致する保護処分を決定

    検察官送致(逆送)を回避。

    長崎家庭裁判所

  10. 2021年11月4日
    令和3年

    その他 福岡高裁が抗告を棄却し、2024年までの収容継続が確定

    23歳を超える収容継続は少なくとも平成以降で初めて。

    福岡高等裁判所

出典・公的資料

一次資料 1件 判決文・白書・調査報告書・法令など、原典にあたれる資料を掲載しています。

さらに調べるには

資料の探し方や引用の書き方は調べ学習・レポートでの使い方にまとめています。

関連する法律用語

この記事を引用する

レポート・記事などで本ページを参照する際は、以下の表記をご利用ください。一次資料までたどる方法は調べ学習・レポートでの使い方をご覧ください。

「佐世保女子高生殺害事件」事件JP、2026年11月8日閲覧。https://jiken.jp/cases/2014-sasebo-high-school-classmate-murder/

更新履歴

  • 2026年11月6日 初版公開

本ページは公的資料に基づいて作成しています。情報の誤りにお気づきの場合や、掲載内容の削除・訂正のご依頼は お問い合わせ・削除依頼よりご連絡ください。