中津川一家6人殺傷事件 通称: 岐阜中津川家族殺害事件

結末 2012年12月、最高裁が検察・弁護側双方の上告を棄却し、男の無期懲役が確定

発生日 2005年2月27日(平成17年) 2005年(平成17年)の事件 / 2月27日に起きた事件
経過 発生から21年8か月 2012年12月3日の確定から13年10か月
発生場所 岐阜県 中津川市
種別 殺人
状態 判決確定
被害 死者 5人  負傷者 1人
2005年2月27日、岐阜県中津川市で、公営老人保健施設の事務長だった男(当時57歳)が、自宅で実母と長男、長女と幼い孫2人の計5人を殺害し、長女の夫に包丁でけがを負わせた事件。男は犯行後に自殺を図った。一審の岐阜地裁と二審の名古屋高裁はいずれも無期懲役とし、2012年12月3日、最高裁第一小法廷は「死刑を選択することも十分考慮しなければならない事案」としながらも上告を棄却して、無期懲役が確定した。原判決を破棄して審理を差し戻すべきだとする裁判官の反対意見が付いた。
中津川一家6人殺傷事件を象徴する概念イラスト
※イメージ画像(生成AIによる概念イラストであり、実際の現場・関係者を写したものではありません)
スポンサーリンク

判決が認定した動機

最高裁の決定によると、男は、同居していた実母が男の妻を長年にわたって泥棒呼ばわりし、常軌を逸した嫌がらせでいじめ続けたことを、自分への嫌がらせでもあると考えていた。さらに、貯金の預け替えを勧めた郵便局長まで実母が泥棒呼ばわりしたことで、これ以上実母と同居することは耐えられないと思い詰め、実母を殺害して自殺しようと決意した。そのうえで、同居の長男と、近くに住む長女夫婦とその幼い子2人についても、殺人犯の家族という汚名を着せられて生きていくのは耐えられないだろうし、不びんだと考えて、殺害しようと決意した。男は事件の約1か月前から、一連の犯行の手順を何度も思い描いていたと認定されている。
スポンサーリンク

事件の経過

2005年2月27日、男は自宅で長男(当時33歳)と実母(当時85歳)を殺害した。続いて、長女(当時30歳)と、長女の息子(当時2歳)、生後20日の長女の娘を殺害した。その後、だまして自宅に連れてきた長女の夫を包丁で刺したが、殺害には至らなかった。男はその直後、包丁で自分の首を数回刺して自殺を図った。最高裁の決定は、この事件を殺人5件、殺人未遂1件の事案としている。

一審・二審の無期懲役

2009年1月13日、岐阜地裁は男に無期懲役を言い渡した。産経新聞によると、判決は男の責任能力を認めたうえで、妻をいじめる母親を殺害した後、家族が殺人者の家族として生きるのは不びんだと精神的に追い詰められた末の一家心中で、酌量の余地があるとして死刑を回避した。この判決には、元最高検検事が「異例の軽い判決というほかない」と批判する一方、「死刑適用の可否は数でない」と支持する声もあった。2010年1月26日、名古屋高裁は検察と弁護側双方の控訴を棄却し、一審の判決を支持した。

最高裁の判断

検察と弁護側の双方が上告した。2012年12月3日、最高裁第一小法廷は双方の上告を棄却し、無期懲役が確定した。決定は、ほかの被害者には男の自殺の道連れにされるべき事情は何もなく、犯行は極めて独善的で理不尽極まるものであり、相当に計画的で、5人の殺害という結果は誠に重大だとして、死刑を選択することも十分考慮しなければならない事案だと述べた。しかし、実母殺害の動機は、実母の言動によって男が苦悩し追い詰められた経緯を踏まえると理解できないわけではなく、子や孫を道連れにした心情も量刑上全く斟酌の余地がないものではないとした。さらに、男の弟と妻が死刑の回避を望み、長女の夫も一審の段階では必ずしも死刑を望んでいなかったこと、男が反省悔悟し、前科前歴もないことなどを挙げ、無期懲役を維持した原判決が著しく正義に反するとまでは認められないと結論づけた。

裁判官の反対意見

決定には、横田尤孝裁判官の反対意見が付いた。反対意見は、量刑で最も重視すべきなのは、生後わずか20日の乳児と2歳の幼児を含む5人もの殺害という結果であり、この一事のみをもってしても極刑はやむを得ないとした。また、男は公営老人保健施設の事務長という立場にあり、実母の対応について専門家に助言を求めるなどの適切な方策をとることが十分にできたのに、何もしなかったと指摘し、原判決を破棄して審理を差し戻すべきだとした。

死刑の選択をめぐって

一審判決は裁判員制度が始まる直前に言い渡され、産経新聞は、死刑の選択をめぐる判断が、国民が量刑も決める裁判員制度でも大きな課題になりそうだと報じた。5人を殺害した事件で無期懲役が確定したこの事件は、死刑を選択する基準をめぐる議論の中で取り上げられている。最高裁の判例集では「岐阜中津川家族殺害事件」の名で掲載されている。

審理・経過の流れ

  1. 事件・事故 2005年2月27日
  2. 判決 2009年1月13日 +1,416日
  3. 判決 2010年1月26日 +378日
  4. 判決 2012年12月3日 +1,042日

経過

  1. 2005年2月27日
    平成17年

    事件・事故 中津川市で家族5人が殺害され1人がけが

    男は犯行後に自殺を図る

  2. 2009年1月13日
    平成21年

    判決 岐阜地裁が無期懲役の判決

    責任能力を認めたうえで死刑を回避

    岐阜地方裁判所

  3. 2010年1月26日
    平成22年

    判決 名古屋高裁が双方の控訴を棄却

    名古屋高等裁判所

  4. 2012年12月3日
    平成24年

    判決 最高裁が上告を棄却し、無期懲役が確定

    横田尤孝裁判官の反対意見

    最高裁判所第一小法廷 (事件番号: 平成22年(あ)第402号)

出典・公的資料

一次資料 1件 判決文・白書・調査報告書・法令など、原典にあたれる資料を掲載しています。

  • 判決文・裁判記録
    最高裁判所第一小法廷  2012年12月3日発行  平成22年(あ)第402号
    犯行の経過と動機の認定、量刑の判断、上告棄却、横田裁判官の反対意見、判示事項の事件名、原審が平成22年1月26日の名古屋高裁であることを確認
  • その他
    産経新聞  2009年1月13日発行
    一審の無期懲役判決、責任能力を認めたうえでの死刑回避、識者の賛否を確認
  • その他
    産経新聞  2010年1月26日発行
    名古屋高裁による双方の控訴棄却と、一審判決の量刑理由の要旨を確認

さらに調べるには

資料の探し方や引用の書き方は調べ学習・レポートでの使い方にまとめています。

関連する法律用語

この記事を引用する

レポート・記事などで本ページを参照する際は、以下の表記をご利用ください。一次資料までたどる方法は調べ学習・レポートでの使い方をご覧ください。

「中津川一家6人殺傷事件」事件JP、2026年10月27日閲覧。https://jiken.jp/cases/2005-nakatsugawa-family-murders/
スポンサーリンク

更新履歴

  • 2026年10月15日 初版公開

本ページは公的資料に基づいて作成しています。情報の誤りにお気づきの場合や、掲載内容の削除・訂正のご依頼は お問い合わせ・削除依頼よりご連絡ください。