羅臼岳ヒグマ人身事故 通称: 羅臼岳登山道ヒグマ人身事故

発生日 2025年8月14日(令和7年) 2025年(令和7年)の事件 / 8月14日に起きた事件
経過 発生から1年2か月
発生場所 北海道 斜里郡斜里町遠音別村(羅臼岳登山道)
種別 事故
状態 終結
被害 死者 1人
  • 事故・災害が変えた安全対策事故を受け、知床ヒグマ対策連絡会議は登山口の閉鎖・解除の基準と手順を明確にし、登山の行動規範を伝えるサイトを新設した。登山道は2026年7月に再開した。
2025年8月14日午前11時ごろ、北海道斜里町の知床国立公園にある羅臼岳の登山道(岩尾別コース)で、下山中の20代の男性がヒグマに襲われて死亡した事故。全登山口が緊急閉鎖され、山中の登山者71人がヘリコプターで救助された。翌15日、子グマ2頭を連れた母グマが見つかり、3頭とも銃で捕獲された。DNA分析で母グマが加害個体とわかった。検証報告書は原因を特定できないとしつつ、子を守る防御的な攻撃の可能性が高いとした。登山道は2026年7月5日に再開した。
羅臼岳ヒグマ人身事故を象徴する概念イラスト
※イメージ画像(生成AIによる概念イラストであり、実際の現場・関係者を写したものではありません)
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知床の羅臼岳と岩尾別コース

羅臼岳は知床半島の知床連山でいちばん高い山で、標高は1,661メートルある。日本百名山の一つで、知床国立公園と知床世界自然遺産の区域に含まれる。斜里町の岩尾別温泉から登る岩尾別コースは標高差1,431メートル、往復12.6キロで、登りに5時間、下りに3時間30分ほどかかる。年間の登山者はおよそ5,000人弱と推定され、知床連山に入る人の約8割を占める。 知床半島は全体がヒグマのすみかで、斜里町でのヒグマの目撃件数は2015年から2024年の平均で年1,253件、大量出没した2023年は2,000件を超えた。ただし、知床半島で2017年以降に起きた人身事故4件は、いずれも捕獲に当たるハンターがけがをしたものだった。死亡事故も1974年と1985年に各1件あるが、どちらも捕獲中のハンターが襲われた例である。報告書によると、ヒグマを理由に岩尾別コースを計画的に閉鎖した記録は確認できない。
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事故の前の要注意情報

報告書によると、事故の4日前の8月10日、岩尾別コースの標高1,000メートルを超える区間で、0歳の子グマ2頭を連れた親子グマが登山者を気にせず登山道を登ってきた。登山者はクマ撃退スプレーを構えて後ずさりした。写真の特徴から、この親子グマは後に捕獲された個体と同じである可能性が高いとされる。8月12日の朝には、別の区間で単独の大人のヒグマが約5分にわたり登山者に近づいたり離れたりした。 知床財団などは12日の午後、ウェブサイトとSNSで注意情報を出し、登山口にクマ撃退スプレーの携行を強く勧める看板を掲げた。13日には環境省・斜里町・知床財団の職員が、駆除も視野に入れて登山道を見回った。しかしヒグマの姿や明確な痕跡は見つからず、注意喚起を続けることになり、登山口は閉鎖されなかった。なお、12日に登山者に近づいた個体が加害個体と同じだという確かな証拠は得られていない。

下山中の事故と71人のヘリ救助

被害者は東京都に住む20代の男性で、同行者と2人で午前5時15分ごろに岩尾別温泉の登山口を出発した。8時30分ごろに山頂に着き、下山の途中、標高559メートルの「560m岩峰」付近で襲われた。報告書は発生を午前11時00分ごろとしている。被害者は同行者から離れて200メートルほど先を歩いていた。報告書は早めのペースだったとし、北海道の記録は先行して単独で走っていたとしている。襲われた瞬間を見た人はいない。被害者はクマ鈴を持っていたが、クマ撃退スプレーは持っていなかった可能性が高い。 同行者は助けを呼ぶ声に気づいて斜面を下り、応戦を試みたがヒグマは離れなかった。同行者は携帯電話の通じる登山道に戻り、11時10分に110番通報した。13時15分ごろまでに知床連山のすべての登山口が緊急閉鎖され、道警と防災のヘリコプターが山中に残った登山者を吊り上げて救助した。救助は17時58分に終わり、その数は71人だった。二次被害を防ぐため、地上の捜索隊はその間登山口で待機し、捜索は翌朝からになった。

親子グマの捕獲とDNA分析

8月15日、警察や猟友会、知床財団の職員ら18人の捜索隊が午前5時30分に活動を始めた。斜面で被害者の持ち物を回収しながら捜し、午後1時すぎ、被害者に接触している、子グマ2頭を連れた母グマを見つけた。隊は母グマに続いて子グマ2頭に発砲し、3頭とも死んだ。被害者はヘリで病院に運ばれ、15時17分に死亡が確認された。 母グマは11歳のメスで、体重117.4キロ、体長140センチだった。北海道の依頼で道総研がDNAを調べ、被害者の着衣などについた体毛や唾液のDNAが母グマのものと一致した。道は8月19日にこの結果を発表した。母グマは2014年生まれで、国立公園の道路沿いなど人目につく場所で毎年のように目撃されていた。人を避けない行動がたびたび確認され、追い払いを繰り返していた個体だった。報告書は、餌付けされていたという情報は事実として確認されていないとしている。

検証報告書が示した要因

事故の検証は、環境省釧路自然環境事務所や北海道、斜里町、知床財団などでつくる知床ヒグマ対策連絡会議が行い、2025年9月11日に速報版について記者会見を開いた。報告書は2026年3月にまとめられた。報告書は、目撃者がいないため明確な原因は特定できなかったとした。そのうえで、アリを食べにヒグマがよく現れる見通しの悪い場所で、子連れの母グマと突然出会ったことによる防御的な攻撃の可能性が高いとした。同行者が反撃しても被害者から離れなかったことなどから、積極的な攻撃の可能性も否定できないとしている。 背景として、人を恐れない「人なれ」したヒグマの増加や、写真撮影のための接近などの不適切な行動、対策に当たる人員の不足を挙げた。2022年の自然公園法改正で接近やつきまといへの規制が強まったが、抑止力として機能したとは言い難いとも書いている。対応面では、伝聞の目撃情報で危険性を評価する手順や、利用の自粛・登山道の閉鎖を決める方法や手続きが明確でなかったことを課題とした。

再発防止策と登山道の再開

連絡会議は再発防止策として、ヒグマのすむ山での登山の行動規範を伝えるウェブサイトの新設や、登山口でのチェックシートの導入を掲げた。危険な事例が起きたときに登山口を閉鎖し、解除する基準と手順もはっきりさせるとした。人とヒグマが出会うことの多い施設周辺や道路沿いなどで危険な行動をとる人なれ個体は、必要に応じて捕獲する方針も示した。知床世界自然遺産地域科学委員会も2026年3月末に緊急声明を出し、再発防止策の着実な実施を求めた。 事故の後閉鎖されていた知床連山の登山道は、2026年7月5日に利用が再開された。7月9日の午前には、下山中の60代の男性にヒグマが走って向かってくる事案があった。男性がクマ撃退スプレーを使い、けがはなかった。同じ日の13時30分に登山口はすべて緊急閉鎖され、問題となるヒグマが確認されなかったとして7月16日に再び開かれた。環境省の速報値では、2025年度のクマによる人身被害は全国で216件、238人で、うち13人が死亡した。北海道の死者2人は、本件と7月の福島町の事故の被害者である。

経過

  1. 2025年8月10日
    令和7年

    その他 岩尾別コースで親子グマが登山者に接近

    後に捕獲された個体と同一の可能性が高いとされる

  2. 2025年8月12日
    令和7年

    その他 登山者への接近事例を受け注意情報と看板を掲示

    クマ撃退スプレーの携行を強く推奨

  3. 2025年8月13日
    令和7年

    捜査 環境省・斜里町・知床財団が登山道を合同巡回

    ヒグマの姿や明確な痕跡は確認されず、登山口は閉鎖されなかった

  4. 2025年8月14日
    令和7年

    事件・事故 下山中の登山者がヒグマに襲われる

    全登山口を緊急閉鎖し、山中の71人をヘリで救助

  5. 2025年8月15日
    令和7年

    その他 親子グマ3頭を捕獲、被害者の死亡を確認

  6. 2025年8月19日
    令和7年

    捜査 DNA分析で母グマが加害個体と判明

    北海道が発表

  7. 2025年8月20日
    令和7年

    捜査 関係機関が現場検証、遭遇地点を特定

  8. 2025年9月11日
    令和7年

    捜査 事故検証報告書の速報版で記者会見

    知床ヒグマ対策連絡会議

  9. 2026年3月31日
    令和8年

    捜査 事故報告書と再発防止策を公表

    知床ヒグマ対策連絡会議

  10. 2026年7月5日
    令和8年

    その他 知床連山の登山道の利用を再開

  11. 2026年7月9日
    令和8年

    その他 ヒグマとの危険遭遇で全登山口を緊急閉鎖

    下山中の男性がクマ撃退スプレーを使い、けがはなかった

  12. 2026年7月16日
    令和8年

    その他 登山道の閉鎖を解除

出典・公的資料

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「羅臼岳ヒグマ人身事故」事件JP、2026年10月27日閲覧。https://jiken.jp/cases/2025-mount-rausu-brown-bear-attack/
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更新履歴

  • 2026年10月17日 初版公開

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