知床遊覧船沈没事故 通称: KAZU I沈没事故
現在
2026年6月、釧路地裁が運航会社の社長に禁錮5年の実刑判決(求刑通り)を言い渡し、被告側が即日控訴
この事件は公判中です。
判決が確定していない被告人・被疑者は、有罪判決が確定するまで無罪と推定されます。記述は2026年10月18日時点で確認できた公的資料・報道に基づいており、今後の審理により変わる可能性があります。
2022年(令和4年)4月23日午後、北海道斜里町の知床半島西側カシュニの滝沖で、観光船「KAZU I」(19トン)が浸水して午後1時26分以降まもなく沈没し、乗客24人・乗員2人の計26人が死亡・行方不明となった。強風・波浪注意報が発表される中での出航で、船首甲板のハッチが十分に閉鎖できない状態のまま航行し、波の打ち込みによる浸水が拡大したことが運輸安全委員会の調査で明らかになった。運航会社は過去にも座礁・接触事故を起こしていたが、国の監査・検査体制の不備もあって改善されないまま今回の事故に至った。運航会社の社長は2026年6月、業務上過失致死罪で禁錮5年の実刑判決を受け、控訴した。
※イメージ画像(生成AIによる概念イラストであり、実際の現場・関係者を写したものではありません)
スポンサーリンク
事故の経過
2022年4月23日、有限会社知床遊覧船が運航する観光船「KAZU I」は、乗客24人・乗員2人を乗せ、午前10時にウトロ港を出航した。この日は強風注意報(午前3時9分発表)・波浪注意報(午前9時42分発表)が既に発表されており、他の観光船運航会社の従業員からは「海に出るのをやめた方がいい」との忠告もあった。ウトロ漁港沖の波高は正午過ぎから急速に悪化した。午後1時7分ごろ、船長は同業他社の社員からのアマチュア無線の呼び出しに「カシュニです。ちょっとスピードが出ないので、戻る時間、結構掛かりそうです」と応じたが、その後「船が浸水してエンジンが止まっている。船の前の方が沈みかけている」と伝え、この社員が午後1時13分ごろ118番通報した。午後1時18分ごろには乗客の携帯電話からも「船首浸水沈んでいる。バッテリーだめ。エンジン使えない」と118番通報があった。午後1時21分から約5分間続いた乗客と親族の通話が最後の通信となり、船は午後1時26分以降まもなくカシュニの滝沖で沈没した。旅客18人と船長・甲板員が死亡し、旅客6人が行方不明となった。
スポンサーリンク
運航会社の過去の安全管理問題
同船は事故の前年にあたる2021年5月、乗客を乗せて航行中にロープに接触する事故を起こし、検査証書不携帯という違法運航の状態で、事故後も知床岬までの運航を続け海上保安庁への報告も怠っていた。同年6月にはGPSへの航路入力ミスによりウトロ漁港近くの浅瀬に座礁する事故も起こしている。同月に行われた北海道運輸局の特別監査では「見張り不十分」が指摘されたが、会社が提出した改善報告書は運輸局職員が作成した文案がほぼそのまま用いられるなど、形式的な対応にとどまっていた。
事故原因の調査結果
運輸安全委員会は2022年12月に経過報告、2023年9月に最終報告書を公表した。調査によれば、知床岬で折り返した復路で波高1メートルを超える波が船首甲板に打ち付ける状態が続く中、船首甲板部のハッチが確実に閉鎖できる状態になかったため船体の動揺で開き、浸水が継続。船体下部の隔壁にあった開口部を通じて浸水が後方に拡大し、エンジン停止から沈没に至ったと結論づけられた。本船は防波壁の高さが甲板部からわずか約10センチしかない構造だったことや、事故直前の検査で法定の無線設備が実際には通信できない携帯電話に変更されていたことも判明した。
捜索・救助活動と船体の引き揚げ
事故直後、海上保安庁の航空機は整備・哨戒業務との兼ね合いから現場到着が通報から約3時間後の午後4時30分となった。翌24日早朝までに11人が救助されたが、いずれも死亡が確認された。行方不明者の捜索は北方領土周辺にも及び、5月に国後島西岸で2人、6月にサハリン南部で1人の遺体が発見され、外交ルートでの協議を経て同年9月9日に海上保安庁の巡視船に引き渡された。船体は同年5月21日から引き揚げ作業が始まり、一度海底に落下するトラブルを経て5月26日に引き揚げに成功、6月1日に陸揚げされた。
運航会社社長の刑事責任
第一管区海上保安本部は2024年9月、運航会社の社長を業務上過失致死の疑いで逮捕し、釧路地方検察庁が同年10月に起訴した(船長は事故で死亡したため書類送検にとどまった)。2025年11月に始まった公判は計12回開かれ、被告側は無罪を主張したが、2026年6月17日、釧路地方裁判所は「事故は容易に予見できた」として求刑通り禁錮5年の実刑判決を言い渡した。被告側は即日控訴し、本稿執筆時点で審理は控訴審に移っている。
旅客船の安全対策強化
国土交通省は事故を受けて設置した「知床遊覧船事故対策検討委員会」での議論を踏まえ、2022年12月に「旅客船の総合的な安全・安心対策」を取りまとめた。安全統括管理者・運航管理者の試験制度創設、事業許可の更新制導入、船長要件の新設、法定無線設備からの携帯電話の除外、船首部の水密性確保基準の強化、違反点数制度や船舶使用停止処分の導入、旅客傷害賠償責任保険の限度額引き上げ(3千万円から1億円以上へ)など、監督・検査・保険にわたる包括的な制度見直しが行われた。
経過
-
2022年4月23日
令和4年
事件・事故
KAZU Iが沈没
13時26分以降まもなくカシュニの滝沖で沈没。乗客24人・乗員2人の計26人が死亡・行方不明となった。
-
2022年6月1日
令和4年
その他
船体が陸揚げされる
-
2022年12月15日
令和4年
その他
運輸安全委員会が経過報告を公表
-
2023年9月7日
令和5年
その他
運輸安全委員会が最終報告書を公表
-
2024年9月
令和6年
逮捕
運航会社社長を逮捕
-
2024年10月
令和6年
起訴
運航会社社長を起訴
-
2026年6月17日
令和8年
判決
釧路地裁が禁錮5年の実刑判決
被告側は即日控訴した。
出典・公的資料
一次資料 3件
判決文・白書・調査報告書・法令など、原典にあたれる資料を掲載しています。
-
◆調査報告書
運輸安全委員会 2022年12月15日発行
事故原因(浸水メカニズム)の調査結果を確認
-
◆調査報告書
運輸安全委員会 2023年9月7日発行
事故当日の通信の経過(13時07分・13時13分・13時18分・13時21分)、沈没時刻(13時26分以降短時間のうち)、死亡・行方不明者の内訳、浸水・沈没のメカニズム、防波壁の高さや法定無線設備の変更を確認
-
◆調査報告書
-
公的発表・広報
時事通信 2026年6月17日発行
一審判決の内容を確認
-
公的発表・広報
日本経済新聞 2026年6月17日発行
判決の詳細・控訴の状況を確認
この記事を引用する
レポート・記事などで本ページを参照する際は、以下の表記をご利用ください。一次資料までたどる方法は調べ学習・レポートでの使い方をご覧ください。
「知床遊覧船沈没事故」事件JP、2026年10月27日閲覧。https://jiken.jp/cases/2022-shiretoko-sightseeing-boat-sinking/
スポンサーリンク
更新履歴
-
2026年9月30日
事実精度監査:沈没時刻(13時26分以降)と事故当日の通信・通報の経過を運輸安全委員会の最終報告書に基づき訂正、死亡・行方不明者の内訳を追記
-
2026年8月11日
初版公開
本ページは公的資料に基づいて作成しています。情報の誤りにお気づきの場合や、掲載内容の削除・訂正のご依頼は
お問い合わせ・削除依頼よりご連絡ください。
出典: https://jiken.jp/cases/2022-shiretoko-sightseeing-boat-sinking/(2026-10-27 取得)/ 事件JP