秋田弁護士刺殺事件

結末 2016年5月、無期懲役が確定。2019年12月には警察官の過失を認め秋田県に賠償を命じた判決も確定した

発生日 2010年11月4日(平成22年) 2010年(平成22年)の事件 / 11月4日に起きた事件
経過 発生から15年11か月 2019年12月19日の確定から6年10か月
発生場所 秋田県 秋田市(泉北)
種別 殺人
状態 判決確定
被害 死者 1人
2010年(平成22年)11月4日未明、秋田市泉北の弁護士の男性(当時55歳)の自宅に、かつて離婚後の財産分与で相手方の代理人を務めた男(当時66歳)が侵入し、男性を刃物で刺して殺害した事件。妻の110番で駆け付けた警察官が、拳銃を取り上げていた男性を取り押さえ、その間に男が刃物を取りに戻って男性を刺したことから、警察の対応が問われた。男は2016年5月に無期懲役が確定した。遺族が起こした国家賠償訴訟では、2019年12月、警察官の対応に過失があったとして秋田県の賠償責任を認めた判決が確定した。
秋田弁護士刺殺事件を象徴する概念イラスト
※イメージ画像(生成AIによる概念イラストであり、実際の現場・関係者を写したものではありません)
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事件の経過

2010年11月4日午前4時ごろ、秋田市泉北3丁目の弁護士の男性(当時55歳)の自宅に、男(当時66歳)が応接室の窓ガラスを割って侵入した。男は、自動装てん式の拳銃(実包13発)、刈込ばさみを分解して片刃にした刃物、火薬を仕込んだベストや手製の爆破装置、手錠などを用意していた。 男性は2001年から約1年間、秋田弁護士会の会長を務め、事件当時は日本弁護士連合会(日弁連)の消費者問題対策委員会の委員長だった。男は離婚の際、元妻が申し立てた財産分与の調停・審判で、男性が元妻の代理人を務めたことに恨みを抱いていた。刑事裁判の一審判決は、動機を「被告の財産を奪ったという思い込みによる逆恨み」と認定した。 男は男性に拳銃を向けて引き金を2回引いたが、弾丸が薬室に装てんされていなかったため発射されなかった。妻は午前4時5分25秒、寝室から携帯電話で110番通報した。男性は駆け付けた警察官の前で刃物で胸を刺され、搬送先の病院で午前5時32分ごろ死亡した。男はその場で殺人未遂の疑いで現行犯逮捕され、容疑は同日中に殺人に切り替えられた。
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駆け付けた警察官の対応

通報を受けて午前4時11分24秒に到着したのは、県警機動捜査隊の警察官2人(ほかに体験入隊中の警察官1人)だった。2人は制服を着ておらず、車のトランクにあった警棒や耐刃防護衣を持たずに家に入った。 後の国家賠償訴訟の控訴審判決によると、警察官は、男から取り上げた拳銃を手にしていた男性を見て、警察官であることを名乗らず、どちらが家人か侵入者かを尋ねないまま男性の手首をつかんだ。その隙に男は刃物を取りに応接室へ向かった。警察官は男性と妻の声で取り違えに気付いて手を放したが、刃物を持って戻ってきた男が男性に向かって突進し、刺した。 秋田県警は事件翌日に「被害者を犯人と勘違いしたのはやむを得なかった」と説明したが、その後「拳銃の暴発を防ぐための措置で、誤認ではない」と説明を変えた。12月27日に公表した検証結果も、訓練・装備・通信指令の問題は認めたものの、現場の警察官の対応には問題がなかったとした。国会では2010年11月、国家公安委員長が、警察官が装備を十分に備えないまま臨場した反省点があったと答弁した。

刑事裁判

男は2010年11月25日、住居侵入・殺人・銃刀法違反の罪で起訴され、裁判員裁判で審理された。2011年11月28日の初公判で、男は住居侵入と銃刀法違反は認めたが、男性が刃物の上に覆いかぶさってきて刺さったと述べ、殺人ではなく殺人未遂にとどまると主張した。 秋田地裁は2011年12月9日、殺意をもって刃物を突き出したと認定して懲役30年(求刑・無期懲役)を言い渡し、警察官が「被害者を犯人と取り違えた」とも判断した。検察・弁護側の双方が控訴した。 仙台高裁秋田支部は2012年9月25日、拳銃の引き金を2回引いた事実を争点として示さずに認定したのは訴訟手続の法令違反だとして、一審判決を破棄し秋田地裁に差し戻した。検察が上告し、最高裁第三小法廷は2014年4月22日、一審に違法はないとして高裁判決を破棄し、仙台高裁に審理を差し戻した。差し戻し後の仙台高裁は2014年9月24日、検察の量刑不当の主張を認めて無期懲役を言い渡した。男の上告は2016年4月19日に棄却され、5月12日に無期懲役が確定した。

遺族の国家賠償訴訟

遺族は2013年10月29日、男と秋田県を相手に、計約2億2185万円の損害賠償を求めて秋田地裁に提訴した。秋田地裁は2017年10月16日、男への請求は認めたが、県への請求は棄却した。 控訴審の仙台高裁秋田支部は2019年2月13日、一審判決を変更して県の責任を認め、男と連帯して賠償するよう命じた(男への賠償額は計約1億6480万円で一審と同額)。判決は、家人と侵入者を見分ける問いかけをせずに拳銃を取り上げようとしたのは誤りで、警棒や耐刃防護衣も着用すべきだったとし、「警察官両名の臨場後の対応は客観的にみて失態を重ねて最悪の事態を招いた」と述べた。一方、通信指令室の対応や到着の遅れ、県警による隠蔽・虚偽説明についての遺族の主張は退けた。 県は上告したが、最高裁第一小法廷は2019年12月19日付で上告を退ける決定をし、県の賠償責任を認めた二審判決が確定した。

弁護士会の対応

日弁連は事件当日に会長声明を出し、受任事件の相手方が弁護士への逆恨みから殺害に及んだ業務妨害行為である疑いが強いとして非難した。12月7日の会長声明では、警察庁と国家公安委員会に警察の初期対応の徹底的な検証と再発防止策を求めた。秋田弁護士会も県警に適正な捜査と再検証を求める声明・要請を重ね、2019年2月の声明では「現在に至るまで再検証は行われていない」と指摘した。 同じ2010年の6月には、横浜でも弁護士が離婚事件の相手方に殺害される事件が起きていた。日弁連の記念誌は「2010年には、横浜と秋田で、弁護士が事件の相手方から殺害されるという事件が起きた」と記し、弁護士業務妨害への対策の流れの中にこの事件を位置づけている。

審理・経過の流れ

  1. 事件・事故 2010年11月4日
  2. 逮捕 2010年11月4日 +0日
  3. 起訴 2010年11月25日 +21日
  4. 判決 2011年12月9日 +379日
  5. 判決 2012年9月25日 +291日
  6. 判決 2014年4月22日 +574日
  7. 判決 2014年9月24日 +155日
  8. 判決 2019年2月13日 +1,603日

経過

  1. 2010年11月4日
    平成22年

    事件・事故 秋田市の弁護士宅に男が侵入し、弁護士の男性を刺殺

    死者1人。駆け付けた警察官が男性を取り押さえた間に刺された

  2. 2010年11月4日
    平成22年

    逮捕 秋田県警が男を現行犯逮捕

    殺人未遂の疑いで逮捕し、同日中に殺人に切り替え

  3. 2010年11月25日
    平成22年

    起訴 秋田地検が住居侵入・殺人・銃刀法違反で起訴

  4. 2010年12月27日
    平成22年

    その他 秋田県警が対応の検証結果を公表

    訓練・装備・通信指令の問題は認めたが、現場の警察官の対応には問題がないとした

  5. 2011年12月9日
    平成23年

    判決 秋田地裁(裁判員裁判)が懲役30年を言い渡す

    求刑は無期懲役。双方が控訴

    秋田地方裁判所

  6. 2012年9月25日
    平成24年

    判決 仙台高裁秋田支部が一審判決を破棄し、地裁に差し戻す

    訴訟手続の法令違反を理由とした

    仙台高等裁判所秋田支部

  7. 2014年4月22日
    平成26年

    判決 最高裁が高裁判決を破棄し、仙台高裁に差し戻す

    一審の手続に違法はないと判断

    最高裁判所第三小法廷 (事件番号: 平成24年(あ)第1816号)

  8. 2014年9月24日
    平成26年

    判決 仙台高裁が一審判決を破棄し、無期懲役を言い渡す

    検察の量刑不当の主張を認めた

    仙台高等裁判所

  9. 2016年5月12日
    平成28年

    その他 上告棄却(4月19日)を経て無期懲役が確定

    最高裁判所

  10. 2019年2月13日
    平成31年

    判決 国家賠償訴訟の控訴審で仙台高裁秋田支部が県の責任を認める

    警察官の対応を「失態を重ねて最悪の事態を招いた」と認定

    仙台高等裁判所秋田支部 (事件番号: 平成29年(ネ)第61号ほか)

  11. 2019年12月19日
    令和元年

    その他 最高裁が県の上告を退け、県の賠償責任が確定

    最高裁判所第一小法廷

出典・公的資料

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「秋田弁護士刺殺事件」事件JP、2026年10月28日閲覧。https://jiken.jp/cases/2010-akita-lawyer-stabbing/
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更新履歴

  • 2026年10月25日 初版公開

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