鹿児島高齢夫婦殺害事件 通称: 下福元町強盗殺人事件

結末 2012年3月、一審無罪の後、控訴審を前に被告人が病死して公訴棄却となった。犯人は特定されていない

発生日 2009年6月19日(平成21年) 2009年(平成21年)の事件 / 6月19日に起きた事件
経過 発生から17年4か月
発生場所 鹿児島県 鹿児島市(下福元町の住宅)
種別 殺人
状態 終結
被害 死者 2人  負傷者 0人
2009年(平成21年)6月19日朝、鹿児島市下福元町の住宅で、住人の夫(当時91歳)と妻(当時87歳)がスコップで頭や顔を殴られて死亡しているのが見つかった事件。強盗殺人などの罪で起訴された無職の男性(当時70歳)に対し、検察は死刑を求刑したが、鹿児島地裁の裁判員裁判は2010年12月に無罪を言い渡した。死刑求刑の裁判員裁判で初めての無罪判決だった。検察の控訴後、控訴審を前に男性が病死し、2012年3月に公訴棄却となった。犯人は特定されていない。
鹿児島高齢夫婦殺害事件を象徴する概念イラスト
※イメージ画像(生成AIによる概念イラストであり、実際の現場・関係者を写したものではありません)
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事件の経過

2009年(平成21年)6月19日朝、鹿児島市南部の下福元町の住宅で、この家に住む夫(当時91歳)と妻(当時87歳)が頭から血を流して死亡しているのを家族が見つけ、警察に通報した。鹿児島県警は鹿児島南警察署に捜査本部を置いた。 起訴状によると、2人は同月18日午後4時30分ごろから19日午前6時ごろまでの間に、居間の窓から侵入した何者かに金属製のスコップで頭や顔を何度も殴られ、その場で死亡した。検察は、現場の壊れた時計などから、犯行時刻を18日の午後7時から9時ごろと推定した。現場では居間の窓ガラスが割られ、室内に土足の跡があり、整理だんすが荒らされていたことから、当初は物取りによる犯行とみられた。
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逮捕と起訴

県警は2009年6月29日、現場に残された指紋や掌紋が一致したことなどから、鹿児島市に住む無職の男性(当時70歳)を逮捕した。男性は逮捕の直後から一貫して否認した。鹿児島地方検察庁は、男性を強盗殺人・住居侵入の罪で鹿児島地方裁判所に起訴した。 起訴された罪名は強盗殺人だったが、後の判決は、現場に現金が残されていたことなどから、犯行の目的が金品だったのかどうかにも疑問を示している。

裁判員裁判と無罪判決

裁判員裁判の初公判は2010年11月2日に鹿児島地裁で開かれ、男性は「絶対にやっていません」と起訴内容を全面的に否認した。裁判員の選任から判決までの日程は40日間で、当時の裁判員裁判で最も長かった。審理の途中には、裁判員も参加して現場検証が行われた。検察は同年11月17日、死刑を求刑した。 鹿児島地裁(平島正道裁判長)は2010年12月10日、男性に無罪を言い渡した。判決は、網戸や窓ガラス、整理だんすなどから見つかった指紋などから、男性が過去に被害者宅に立ち入ったことは認めたが、それらを総合しても犯人であるとの推認には「遠く及ばない」とした。被害者宅に行ったことは一度もないという男性の供述は事実に反するとしつつ、「その一事をもって、直ちに被告人を犯人であると認めることはできない」と述べた。凶器のスコップから男性の痕跡が全く検出されなかったことも、犯人であることを否定する方向に働く事情として挙げた。 判決はまた、たんすの引き出しに現金入りの財布や封筒が残されていたことや、攻撃が頭や顔に集中していたことから、殺害の態様は強盗目的とそぐわず「えん恨目的を疑わせる」と指摘した。さらに、真相解明に必要な捜査が十分に行われたかには疑問が残るとし、検察官は被告人に有利な方向に働く証拠であっても自ら提出するのが相当だと述べた。死刑が求刑された裁判員裁判で無罪判決が出たのは、これが初めてだった。

控訴と公訴棄却

鹿児島地検は「判決の事実認定には誤りがある」として、2010年12月22日に福岡高等裁判所宮崎支部へ控訴した。しかし控訴審が始まる前の2012年3月10日、男性は鹿児島市の自宅で病死した(73歳)。福岡高裁宮崎支部は同月27日付で公訴棄却を決定し、刑事手続きは終わった。 このため、裁判員裁判の無罪判決について上級審の判断は示されず、無罪判決も確定しないまま事件は終結した。検察は「別の犯人を示す証拠がない」として、被害者の遺族に捜査の打ち切りを伝えていた。2人を殺害した犯人は特定されていない。

社会への影響

本件は、裁判員制度の開始後、死刑が求刑された事件で初めて無罪判決が出た事例として注目された。2011年10月の参議院法務委員会では、判決が検察官の証拠提出のあり方に触れた点が、証拠開示の問題として取り上げられた。2012年6月の衆議院法務委員会では、裁判員の審理期間が長くなった例として挙げられた。 鹿児島大学の研究者の論文も、本件を素材に、長期にわたる審理、重大事件や否認事件を裁判員裁判で扱うことの是非、検察官控訴のあり方などを検討している。本件をきっかけとした法改正は確認されていない。

審理・経過の流れ

  1. 起訴 2009年
  2. 事件・事故 2009年6月19日 +169日
  3. 逮捕 2009年6月29日 +10日
  4. 公判 2010年11月2日 +491日
  5. 公判 2010年11月17日 +15日
  6. 判決 2010年12月10日 +23日

経過

  1. 2009年
    平成21年

    起訴 強盗殺人・住居侵入の罪で起訴

    起訴日は資料によって7月と9月に分かれる

  2. 2009年6月19日
    平成21年

    事件・事故 鹿児島市下福元町の住宅で高齢の夫婦が殺害されているのが見つかる

    死者2人。家族が見つけて通報した

  3. 2009年6月29日
    平成21年

    逮捕 鹿児島市に住む無職の男性を逮捕

    現場の指紋・掌紋の一致などが理由とされた。男性は一貫して否認した

  4. 2010年11月2日
    平成22年

    公判 裁判員裁判の初公判、男性は全面否認

    選任から判決まで40日間の日程

    鹿児島地方裁判所

  5. 2010年11月17日
    平成22年

    公判 検察が死刑を求刑

    鹿児島地方裁判所

  6. 2010年12月10日
    平成22年

    判決 鹿児島地裁が無罪判決

    死刑求刑の裁判員裁判で初めての無罪判決

    鹿児島地方裁判所 (事件番号: 平成21年(わ)第240号)

  7. 2010年12月22日
    平成22年

    その他 鹿児島地検が福岡高裁宮崎支部に控訴

    「判決の事実認定には誤りがある」とした

  8. 2012年3月10日
    平成24年

    その他 控訴審を前に被告人の男性が病死

  9. 2012年3月27日
    平成24年

    その他 福岡高裁宮崎支部が公訴棄却を決定し、刑事手続きが終結

    無罪判決について上級審の判断は示されなかった

    福岡高等裁判所宮崎支部

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「鹿児島高齢夫婦殺害事件」事件JP、2026年10月28日閲覧。https://jiken.jp/cases/2009-kagoshima-elderly-couple-murder/
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更新履歴

  • 2026年10月28日 初版公開

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