守屋前防衛事務次官汚職事件 通称: 防衛省汚職事件

発生日 2007年11月28日(平成19年)
経過 発生から18年10か月 2010年8月27日の確定から16年1か月
発生場所 東京都 新宿区(防衛省)/千代田区(東京地検特捜部)
種別 汚職・政治事件
状態 判決確定
2007年(平成19年)11月28日、東京地方検察庁特別捜査部が、守屋武昌前防衛事務次官を、防衛専門商社「山田洋行」の元専務から自衛隊の装備品納入をめぐって便宜を図った謝礼としてゴルフ旅行の接待を受けた収賄容疑で逮捕した事件。事務次官在任中を含む長年のゴルフ接待が10月に報じられ、前次官は逮捕前に衆参両院で証人喚問を受けていた。起訴事実は宿泊・日帰りのゴルフ接待と現金の受領による計約1,250万円の収賄と、証人喚問での偽証(議院証言法違反)で、2008年11月5日に東京地方裁判所は懲役2年6月・追徴金約1,250万円の実刑判決を言い渡した。控訴審も一審を支持し、2010年8月27日付の上告取り下げで刑が確定した。防衛省の事務方トップによる「次官の犯罪」として、防衛装備品の調達制度の見直しが議論される契機となった。
守屋前防衛事務次官汚職事件を象徴する概念イラスト
※イメージ画像(生成AIによる概念イラストであり、実際の現場・関係者を写したものではありません)
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事件の経過

守屋武昌氏は1971年に防衛庁に入り、防衛局長などを経て2003年8月から2007年8月まで事務次官を務めた。在任期間は4年に及び、防衛庁の省への移行などに力を振るった。 退任から間もない2007年10月、在任中に防衛装備品の輸入を手がける商社「山田洋行」の元専務から繰り返しゴルフの接待を受けていたことが報じられた。自衛隊員倫理規程は、利害関係者からの接待を禁じている。 国会は前次官を証人として喚問した。2007年10月29日の衆議院の特別委員会で前次官は、元専務とのゴルフは「多いときで月四回」で、5年間で「百回は超えていた」と述べ、偽名でプレーしていたことも認めた。一方、プレー代については「一万円ずつ払っております」と証言した。11月15日には参議院外交防衛委員会でも証人喚問が行われた。同じ委員会に参考人として呼ばれた山田洋行の社長は、経理データを調べたところ1万円の入金処理は一切されていないと述べている。 東京地検特捜部はまず元専務を業務上横領などの容疑で逮捕し、2007年11月28日、前次官と元専務を収賄・贈賄の容疑で逮捕した。翌29日の参議院外交防衛委員会では、逮捕容疑が「山田洋行による自衛隊の装備品等の納入等に関して種々便宜な取り計らいを受けたことに対する謝礼」であると取り上げられている。
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容疑の内容

国立国会図書館の調査論文によると、最初の逮捕容疑は、前次官が夫人とともに12回にわたってゴルフ旅行の接待を受けたというもので、利益供与額は約390万円相当と報じられた。その後の捜査で、前次官がゴルフ接待のほかに元専務から約360万円の現金を受け取っていたことが明らかになったとして、東京地検は12月18日に前次官を収賄容疑で再逮捕した。 最終的な起訴事実は、収賄(389万円相当の宿泊ゴルフ接待、364万円の賄賂の授受、497万円相当の日帰りゴルフ接待)と、議院証言法違反(国会の証人喚問での偽証)である。収賄の総額は約1,250万円にのぼる。 検察によれば、前次官はこれらの接待や現金の見返りとして、ミサイルを回避するためのチャフ・フレアの射出装置、次期輸送機(CX)や次期護衛艦のエンジン、生物偵察車用の検知装置など7種類の装備品の調達で、山田洋行側に便宜を図ったとされた。2008年7月の防衛省改革会議報告書は、検察側の主張として、山田洋行が海外メーカーの見積書を改ざんしたことが発覚した際に、前次官が穏便な処理へ誘導したことなども挙げている。

裁判の経過

初公判は2008年4月21日に東京地方裁判所で開かれ、前次官は起訴事実をおおむね認めた。9月5日には前次官と元専務ら事件の関係者4人に対する論告求刑が行われた。 2008年11月5日、東京地裁は前次官に懲役2年6月・追徴金約1,250万円(1,250万1,056円)の実刑判決を言い渡した。元専務には懲役2年の実刑判決が言い渡された。判決は、前次官が装備品の調達でさまざまな便宜を供与し、元専務を支援するような発言を重ねていたことを明確に認定したとされる。国会の証人喚問でプレー代を1回1万円払っていたとした証言は虚偽と認定され、議院証言法違反でも有罪となった。前次官側は即日控訴した。 控訴審の東京高等裁判所も一審の実刑判決を支持した。前次官は最高裁判所に上告したが、2010年8月27日付で上告を取り下げ、懲役2年6月・追徴金約1,250万円の刑が確定した。前次官はその後収監された。

防衛省改革会議の指摘

事件が明るみに出た時期の防衛省では、補給艦の給油量の取り違え、イージス艦の情報流出、2008年2月のイージス艦「あたご」と漁船の衝突事故など、不祥事が相次いでいた。福田康夫首相のもとに設けられた防衛省改革会議は、2008年7月15日に報告書「不祥事の分析と改革の方向性」をまとめ、前次官の事件を5つの事案の一つとして取り上げた。 報告書によると、前次官は装備局航空機課長だった1990〜1992年ごろから元専務と次期支援戦闘機のエンジンをめぐって話し合う間柄になり、防衛政策課長となった1994年ごろからゴルフの接待を定期的に受けるようになった。2007年8月の退任まで約13年にわたり、月3〜4回の日帰りゴルフや年1〜5回のゴルフ旅行の接待を受けていたとされる。 報告書は、隊員に綱紀粛正を呼びかけ、倫理監督官でもあった最高幹部が「自らについては全く正反対の行為を恣にしていた」と指摘し、事件を「前事務次官の背信」と位置づけた。そのうえで、前次官が組織の中で誰からもチェックされずに接待を受け続け、調達で個人的利益のために影響力を行使したと疑われる点を重大な問題とした。改革の方向として、防衛調達の透明性の確保と責任の所在の明確化、会議録の作成・公開、独立性の高い第三者によるチェック体制の確立、職種を横断したチーム(IPT)による調達方式の本格導入などを提言している。

事件が浮き彫りにした問題

防衛装備品の調達をめぐっては、1998年の防衛庁調達実施本部をめぐる水増し請求・背任事件をきっかけに、チェック体制の強化や競争性・透明性の確保を柱とする「調達改革」が進められてきた。国立国会図書館の調査論文は、守屋前次官の事件について、調達改革が一定の成果を上げてきたにもかかわらず、装備品の選定・調達に対する事務次官の権限や、商社を通じた輸入調達の仕組みの不備という、それまで議論されてこなかった新たな論点を提示したと分析している。 調達プロセスの実務上の権限は装備施設本部長にあるが、事務次官は防衛政策の根幹を握ると同時に装備品の開発や調達も掌握する最高責任者であり、その立場から担当部署に働きかけることができた。次期輸送機のエンジン調達をめぐっては、元専務が山田洋行を退社して設立した会社との随意契約にするよう、前次官が担当者に発言したとされる件も国会で取り上げられた。判決を報じた新聞には、「調達部門にメスを入れたものの中途半端に終わっている」という防衛省幹部の反応も伝えられている。

審理・経過の流れ

  1. 逮捕 2007年11月28日
  2. 逮捕 2007年12月18日 +20日
  3. 公判 2008年4月21日 +125日
  4. 公判 2008年9月5日 +137日
  5. 判決 2008年11月5日 +61日
  6. 判決 2010年8月27日 +660日

経過

  1. 2007年8月
    平成19年

    その他 守屋武昌氏が防衛事務次官を退任

    2003年8月から務めた事務次官を退任した。

  2. 2007年10月29日
    平成19年

    捜査 衆議院で証人喚問

    衆議院の国際テロリズム防止等特別委員会で証人喚問。ゴルフ接待は5年間で「百回は超えていた」と認める一方、プレー代は「一万円ずつ払っております」と証言した。

  3. 2007年11月15日
    平成19年

    捜査 参議院外交防衛委員会で証人喚問

    参議院でも証人喚問。同日、参考人の山田洋行社長は、1万円の入金処理は経理データ上一切ないと述べた。

  4. 2007年11月28日
    平成19年

    逮捕 東京地検特捜部が前次官を収賄容疑で逮捕

    山田洋行元専務から装備品納入をめぐる便宜の謝礼としてゴルフ旅行の接待を受けた収賄容疑で逮捕。元専務も贈賄容疑で逮捕された。

  5. 2007年12月18日
    平成19年

    逮捕 現金約360万円の受領で再逮捕

    ゴルフ接待のほかに元専務から約360万円の現金を受け取っていたとして、収賄容疑で再逮捕された。

  6. 2008年4月21日
    平成20年

    公判 東京地裁で初公判

    前次官は収賄(宿泊ゴルフ接待389万円相当・現金364万円・日帰りゴルフ接待497万円相当)と議院証言法違反の起訴事実をおおむね認めた。

    東京地方裁判所

  7. 2008年7月15日
    平成20年

    その他 防衛省改革会議が報告書を提出

    報告書「不祥事の分析と改革の方向性」で前次官の事件を「前事務次官の背信」と位置づけ、防衛調達の第三者チェック体制の確立などを提言した。

  8. 2008年9月5日
    平成20年

    公判 論告求刑

    前次官と元専務ら関係者4人に対する論告求刑が行われた。

    東京地方裁判所

  9. 2008年11月5日
    平成20年

    判決 一審で懲役2年6月の実刑判決

    収賄罪と議院証言法違反で懲役2年6月・追徴金1,250万1,056円。元専務は懲役2年の実刑。前次官側は即日控訴した。

    東京地方裁判所

  10. 2010年8月27日
    平成22年

    判決 上告取り下げにより懲役2年6月の実刑が確定

    控訴審でも一審判決が支持された後、最高裁への上告を取り下げ、懲役2年6月・追徴金約1,250万円が確定した。

    最高裁判所

出典・公的資料

一次資料 5件 判決文・白書・調査報告書・法令など、原典にあたれる資料を掲載しています。

関連する法律用語

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レポート・記事などで本ページを参照する際は、以下の表記をご利用ください。

「守屋前防衛事務次官汚職事件」事件JP、2026年10月3日閲覧。https://jiken.jp/cases/2007-moriya-defense-bribery/

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更新履歴

  • 2026年10月3日 初版公開

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