栃木小1女児殺害事件 通称: 今市事件

発生日 2005年12月1日(平成17年)
経過 発生から20年9か月 2020年3月4日の確定から6年6か月
発生場所 栃木県 日光市(旧今市市、連れ去り現場)
種別 誘拐・監禁
状態 判決確定
被害 死者 1人  負傷者 0人
2005年(平成17年)12月1日、栃木県今市市(現・日光市)で、下校途中の小学1年生の女児が何者かに車で連れ去られ、翌2日、約60キロ離れた茨城県常陸大宮市の山林で遺体となって発見された事件。捜査は長期間難航したが、2014年に別件で身柄を拘束された男が本件で起訴された。宇都宮地方裁判所・東京高等裁判所とも無期懲役を言い渡し、2020年(令和2年)3月4日に最高裁判所が上告を棄却して無期懲役が確定した。判決確定後も支援者らが冤罪を主張し再審請求を行っている。

事件の経緯

2005年12月1日午後2時50分頃、栃木県今市市(現・日光市)の通学路で、下校中の小学1年生の女児が同級生3人と別れた直後に行方不明になった。女児は自宅までの約1キロの間、人通りの少ない雑木林沿いの道を通る途中で連れ去られたとみられる。約23時間後の12月2日午後、連れ去り現場から約60キロ東に離れた茨城県常陸大宮市の山林の斜面で、女児が遺体となって発見された。遺体には胸部を含む複数の刺し傷があった。事件発生直後、若い男が運転する白いセダン型の乗用車を見たとの目撃証言が複数寄せられたが、周辺の防犯カメラには該当する車両が写っていなかった。

難航した捜査

栃木・茨城両県警は合同捜査本部を設置し、大規模な聞き込みや検問、防犯カメラ映像の確認を進めたが、ランドセルや衣服などの遺留品は発見されず、有力な物証に乏しいまま捜査は長期化した。警察犬は連れ去り現場から約120メートル進んだ地点で臭跡を見失った。2006年8月には200万円の捜査特別報奨金が設定され、後に500万円へ増額されたが、決定的な情報は得られなかった。遺体から検出された男性のDNA型は2007年3月に判明したが、2009年9月、これは栃木県警の元捜査幹部のものであり、捜査の過程で誤って付着したものと判定され、捜査は振り出しに戻った。

別件逮捕から起訴まで

事件発生から約8年が過ぎた2014年1月29日、栃木県鹿沼市の男が偽ブランド品所持(商標法違反)の容疑で別件逮捕された。取り調べの過程で本件への関与をうかがわせる供述をしたとされ、同年6月3日、栃木県警は殺人容疑で男を本件により再逮捕した。男は「殺したことは間違いありません」と述べ、ナイフで刺して殺害し遺体を山中に遺棄したとする供述調書が複数作成された。同年6月24日、宇都宮地方検察庁は殺人罪などで男を起訴した。ただし凶器や被害者の所持品は依然として発見されていない。

一審が認定した犯行の経過

一審判決は被告人の自白に基づき、次のような経過を認定した。被告人はかねて女児に性的な関心を抱いており、2005年12月1日午後2時38分頃から午後3時までの間、今市市内の小学校付近の路上で下校中の女児を無理やり車に乗せて連れ去り、栃木県鹿沼市内の自宅に連れ込んでわいせつな行為をした。女児に顔や車を見られたことで拉致・わいせつ行為が発覚し家族に迷惑がかかることを恐れた被告人は、女児を殺害するほかないと考え、翌2日午前4時頃、遺体発見現場となった山林の林道で殺意をもって胸部をナイフで多数回突き刺し、失血死させた。

一審判決

2016年4月8日、宇都宮地方裁判所(裁判員裁判)は検察側の求刑どおり無期懲役を言い渡した。判決は、被告人車両に酷似した車両が12月2日午前4時45分に遺体遺棄現場近くのインターチェンジへ流入する様子が防犯カメラに写っていたことなどの状況証拠と、取調べの録音・録画映像に残る被告人の様子を踏まえ、自白は信用できると判断した。弁護側は、123日間に及んだ身柄拘束の長さや別件逮捕を利用した取調べの違法性、取調べ中に暴行を受けたとする被告人の主張などを踏まえ、自白の任意性・信用性を争ったが、判決はこれを退けた。判決後に公表された法学者による批判的検証では、独立した客観的物証に乏しく、有罪認定の大部分が被告人の自白の信用性判断に依拠していた点が指摘されている。

控訴審での訴因変更と有罪維持

被告側の控訴を受けた控訴審の途中、2018年1月11日、検察側は異例の訴因変更を請求した。従来「12月2日未明に遺棄現場で殺害した」としていた内容を、「殺害日時は12月1日午後2時38分から翌2日午前4時ごろまでの約13時間の幅」「場所は栃木県内・茨城県内またはその周辺」とする内容に改め、東京高等裁判所はこれを認めた。同年8月2日の判決で、東京高裁は自白の信用性に疑問があるとして一審判決を破棄したものの、状況証拠を総合すれば犯行を認定できるとして、改めて無期懲役を言い渡した。訴因の日時・場所を大幅に緩和した末の有罪認定という異例の展開は、法曹関係者の間でも議論を呼んだ。

上告審・判決確定

被告側は上告したが、2020年3月4日、最高裁判所第二小法廷は上告を棄却する決定を示し、同月17日付で無期懲役が確定した。決定は独自の判断を示さないいわゆる三行決定で、控訴審の判断がそのまま維持される形となった。

判決確定後の再審請求運動

判決確定後、被告の弟らは支援団体「えん罪今市事件・勝又拓哉さんを守る会」を結成し、実名で情報発信や街頭活動を続けている。弁護団・支援団体は、被害者への身体的接触を示すDNA型(体液・皮膚片など)が被告から一切検出されていないこと、鑑定資料の粘着テープから被告以外の人物のDNA型が検出されたことなどを、再審請求で争う根拠として主張している。2025年には、DNA型再鑑定によって再審無罪につながった足利事件の弁護団経験を持つ泉澤章弁護士らが新たな弁護団に加わり、再審請求の準備を進めている。同年10月18日には宇都宮市内で支援団体の総会が開かれ、県内外から約80人が参加し、再審請求に向けた機運を高めた。

審理・経過の流れ

  1. 事件・事故 2005年12月1日
  2. 逮捕 2014年1月29日 +2,981日
  3. 逮捕 2014年6月3日 +125日
  4. 起訴 2014年6月24日 +21日
  5. 判決 2016年4月8日 +654日
  6. 判決 2018年8月2日 +846日
  7. 判決 2020年3月4日 +580日

経過

  1. 2005年12月1日
    平成17年

    事件・事故 下校途中の女児が連れ去られる

    通学路で同級生と別れた直後、車で連れ去られた。

  2. 2005年12月2日
    平成17年

    その他 茨城県内の山林で遺体発見

    連れ去り現場から約60キロ離れた山林で発見された。

  3. 2014年1月29日
    平成26年

    逮捕 商標法違反の容疑で別件逮捕

  4. 2014年6月3日
    平成26年

    逮捕 殺人容疑で本件により再逮捕

    商標法違反で別件逮捕されていた男が、取り調べの過程での供述を受け、本件の殺人容疑で栃木県警に再逮捕された。

  5. 2014年6月24日
    平成26年

    起訴 殺人罪などで起訴

    宇都宮地方検察庁が男を殺人罪などで起訴した。

  6. 2016年4月8日
    平成28年

    判決 宇都宮地方裁判所が無期懲役を言い渡し

    自白を主な根拠とした。

    宇都宮地方裁判所

  7. 2018年8月2日
    平成30年

    判決 東京高等裁判所が一審を破棄し改めて無期懲役

    自白の信用性を否定したが、訴因変更のうえ状況証拠により有罪とした。

    東京高等裁判所

  8. 2020年3月4日
    令和2年

    判決 最高裁判所が上告を棄却し無期懲役が確定

    最高裁判所

  9. 2025年10月18日
    令和7年

    その他 支援団体総会が開かれ再審請求に向け機運高まる

    宇都宮市内で支援団体「えん罪今市事件・勝又拓哉さんを守る会」の総会が開かれ、県内外から約80人が参加した。

出典・公的資料

一次資料 1件 判決文・白書・調査報告書・法令など、原典にあたれる資料を掲載しています。

関連する法律用語

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「栃木小1女児殺害事件」事件JP、2026年9月15日閲覧。https://jiken.jp/cases/2005-imaichi-girl-murder/

関連事件

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更新履歴

  • 2026年8月18日 判決文を引用する学術論文(神戸学院法学)を出典に追加し、一審が認定した犯行の経過(動機・態様)と証拠構造への学術的指摘を加筆
  • 2026年8月18日 捜査経過・訴因変更の経緯・判決確定後の再審請求運動を加筆し、出典4件を追加。誤っていた起訴日を訂正(2014-06-03再逮捕/2014-06-24起訴)
  • 2026年7月16日 初版公開

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