富士見産婦人科病院事件

結末 1990年3月、最高裁が上告を棄却し院長の懲役8か月・執行猶予3年が確定。元理事長は一審で懲役1年6か月・執行猶予4年

発生日 1980年9月10日(昭和55年) 1980年(昭和55年)の事件 / 9月10日に起きた事件
経過 発生から46年1か月 2009年5月28日の確定から17年5か月
発生場所 埼玉県 所沢市
種別 詐欺・経済事件
状態 判決確定
1980年(昭和55年)9月10日、埼玉県所沢市の富士見産婦人科病院の理事長が医師法違反などの容疑で逮捕された事件。医師免許を持たない理事長が超音波検査を行って誤った診断を下し、それに基づいて病院の医師らが手術の必要のない女性患者の子宮や卵巣を摘出していたことが発覚し、社会問題化した。刑事・民事の裁判を経て、2005年に院長と医師らに医師法上の行政処分が下された。
富士見産婦人科病院事件を象徴する概念イラスト
※イメージ画像(生成AIによる概念イラストであり、実際の現場・関係者を写したものではありません)
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事件の発覚

1980年(昭和55年)9月10日、埼玉県所沢市にあった富士見産婦人科病院の理事長・北野早苗(当時55歳)が、医師法と保健婦助産婦看護婦法違反の容疑で埼玉県警察に逮捕された。警察庁の国会答弁によれば、容疑は、医師や看護士の資格がない北野が1978年9月ごろから1980年5月ごろまでの間、主婦ら12人に対して超音波診断装置を操作し、子宮筋腫や卵巣嚢腫などの病名を告げるなどの診断行為をしていたというものだった。同病院では、医師免許を持たない北野が当時まだ広く普及していなかった超音波検査を自ら行って多くの女性患者に誤った診断を下し、その結果に基づいて病院の医師らが、手術の適応がないのに子宮や卵巣を摘出していた(2005年の厚生労働省の国会答弁)。他の病院で再検査を受けた患者から異常がないと指摘されたことをきっかけに発覚し、1980年9月12日付の朝日新聞のスクープ報道により事件は社会問題化した。逮捕後、警察署や保健所への被害の申告は約1400人に上り、10月14日までに同病院で手術を受けた32人が傷害罪で埼玉県警察に告訴した。北野は10月1日、浦和地方検察庁川越支部により医師法違反で起訴された。埼玉県警察が押収した摘出臓器40体を鑑定した結果、子宮筋腫と診断されていた39体のうち、実際に筋腫が確認できたのは9体にとどまった。
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裁判の経過とその後

院長(理事長の妻)も、資格のない理事長に超音波検査をさせたなどとして、1980年12月26日に保健婦助産婦看護婦法違反で起訴された。1988年1月28日、浦和地方裁判所川越支部は元理事長に懲役1年6か月・執行猶予4年、院長に懲役8か月・執行猶予3年を言い渡した。控訴審の東京高等裁判所はいずれの控訴も棄却し(院長は1989年2月23日)、院長の刑は1990年3月、最高裁判所が上告を棄却して確定した。患者らが告訴した傷害罪は1983年8月に不起訴となった。行政面では、埼玉県が1980年12月3日に同病院の保険医療機関の指定と保険医3人の登録を取り消し、院長は1981年2月に医業停止6か月の処分を受けた。病院は同年9月に休止届を出した。一方、元患者ら63人が総額約14億円の損害賠償を求めた民事訴訟では、1999年6月の東京地方裁判所判決が病院ぐるみの不必要な臓器摘出を認定し、2004年7月、最高裁判所が病院側の上告を棄却して総額約5億1400万円の賠償を命じる判決が確定した。民事判決の確定を受けて厚生労働省は、賠償が認められた事例のうち9例について事実認定を行い、医道審議会への諮問・答申を経て、事件発覚から25年近くがたった2005年3月2日、院長と医師らに対する医師法上の行政処分を決定した(医師免許を持たない元理事長は処分の対象ではない)。院長は医師免許を取り消され、処分を不服とする訴訟でも2009年5月28日に最高裁判所で処分が確定したとされる。刑事事件として起訴されなかった医療過誤について、民事判決を根拠に医師免許が取り消された初めてのケースとされる。被害を受けた元患者らは「富士見産婦人科病院被害者同盟」を結成し、事件発覚から30年以上にわたって国や医療機関に再発防止を求める活動を続けた。この事件は、医師でない者による無資格診療や不必要な臓器摘出の実態を社会に広く知らしめ、その後のインフォームド・コンセントの重要性や、セカンドオピニオンを求める患者の権利意識の高まりにも影響を与えたとされる。

審理・経過の流れ

  1. 事件・事故 1980年9月10日
  2. 起訴 1980年10月1日 +21日
  3. 起訴 1980年12月26日 +86日
  4. 判決 1988年1月28日 +2,589日
  5. 公判 1989年2月23日 +392日
  6. 判決 1990年3月 +371日
  7. 判決 2004年7月 +5,236日
  8. 判決 2009年5月28日 +1,792日

経過

  1. 1980年9月10日
    昭和55年

    事件・事故 理事長の男を医師法・保健婦助産婦看護婦法違反容疑で逮捕

    無資格で超音波診断装置を操作し、主婦ら12人に病名を告げるなどの診断行為をした疑い。

  2. 1980年9月12日
    昭和55年

    その他 朝日新聞のスクープ報道で事件が社会問題化

  3. 1980年10月1日
    昭和55年

    起訴 理事長を医師法違反で起訴

    浦和地方検察庁川越支部が起訴した。

  4. 1980年12月3日
    昭和55年

    その他 埼玉県が保険医療機関の指定と保険医3人の登録を取り消し

    監査で不正診療・不正請求が判明したため。

  5. 1980年12月26日
    昭和55年

    起訴 院長を保健婦助産婦看護婦法違反で起訴

    資格のない理事長に超音波検査をさせたなどとして、浦和地方検察庁が起訴した。

  6. 1983年8月
    昭和58年

    その他 傷害罪は不起訴処分に

    患者らの告訴による傷害罪(233件)は不起訴処分となった。刑事責任は医師法違反・保健師助産師看護師法違反の別事件で追及された。

  7. 1988年1月28日
    昭和63年

    判決 元理事長と院長に有罪判決

    元理事長(医師法違反)に懲役1年6か月・執行猶予4年、院長(保健婦助産婦看護婦法違反)に懲役8か月・執行猶予3年。

    浦和地方裁判所川越支部

  8. 1989年2月23日
    平成元年

    公判 東京高裁が院長の控訴を棄却

    元理事長の控訴も同じ月に棄却された。

    東京高等裁判所

  9. 1990年3月
    平成2年

    判決 最高裁が院長の上告を棄却し刑が確定

    最高裁判所

  10. 2004年7月
    平成16年

    判決 最高裁、民事訴訟で病院側の賠償責任が確定

    賠償額は総額約5億1400万円

    最高裁判所

  11. 2005年3月2日
    平成17年

    その他 厚生労働省が院長・医師らに医師法上の行政処分

    民事で賠償が認められた事例のうち9例について事実認定し、医道審議会の答申を経て決定した。

  12. 2009年5月28日
    平成21年

    判決 院長の医師免許取り消し処分が確定したとされる

    最高裁判所

出典・公的資料

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「富士見産婦人科病院事件」事件JP、2026年10月30日閲覧。https://jiken.jp/cases/1980-fujimi-hospital-case/
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更新履歴

  • 2026年10月19日 刑事裁判の一審判決の日付と院長の刑を追記し、元理事長の刑が1988年に確定したとする記述を改めた
  • 2026年10月3日 一次資料補強:国会会議録(警察庁・厚生大臣・厚生労働省の答弁)を出典に追加。2005年の行政処分の対象を「元理事長」から「院長と医師ら」に、院長の刑の確定年を1990年に訂正し、逮捕容疑・起訴・告訴・行政処分の経過を加筆
  • 2026年9月25日 逮捕容疑を訂正(傷害容疑→医師法違反、国会答弁3件で確認)、傷害罪が不起訴だった事実を年表に追加、国会会議録を一次資料として追加
  • 2026年7月29日 初版公開

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