佐賀銀行デマメール事件 通称: 佐賀銀行取り付け騒ぎ

発生日 2003年12月25日(平成15年)
経過 発生から22年8か月
発生場所 佐賀県 佐賀市
種別 詐欺・経済事件
状態 終結
2003年(平成15年)12月25日、佐賀銀行が翌26日に倒産するという事実無根の内容の電子メールがチェーンメールとして広がり、佐賀県内の店舗に預金を引き出そうとする客が殺到する取り付け騒ぎが起きた。同行の経営は健全だったが、前年同日比で約180億円の引き出しと3万2000件の取引が発生したと記録されている。メールの発信元とされた20歳代の女性は2004年2月に信用毀損容疑で書類送検されたが、騒ぎとの因果関係を立証できず嫌疑不十分で不起訴となった。携帯電話の電子メールが短時間で風評被害を拡大させた最初期の事例として、現在も参照され続けている。
佐賀銀行デマメール事件を象徴する概念イラスト
※イメージ画像(生成AIによる概念イラストであり、実際の現場・関係者を写したものではありません)
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クリスマスの夜に広がったメール

2003年(平成15年)12月25日未明、「銀行がつぶれるそうです」という趣旨の電子メールが佐賀県内で出回り始めた。内容は、佐賀銀行が翌26日に倒産するというものだった。 発端は、ある女性が知人に宛てて送った1通のメールだったとされる。それが転送を重ねてチェーンメール化し、携帯電話の電子メールを通じて短時間のうちに広範囲に伝播した。当時、携帯電話のメールは急速に普及していたが、情報の真偽を確かめる手段は乏しく、知人から届いた情報という形式が信憑性を補強する働きをした。 佐賀銀行は佐賀県を地盤とする地方銀行で、経営は健全だった。倒産の事実はまったく存在しなかった。
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店舗に伸びた行列

12月25日の営業開始時刻から、佐賀銀行の本店や支店に預金を引き出そうとする客が集まり始めた。同日夕刻には200人もの行列ができ、それを見た他の顧客も不安に駆られて列に並ぶという悪循環が生まれた。 取り付け騒ぎの典型的な構造がここにある。ある預金者が引き出しに動いたという情報そのものが、他の預金者にとって引き出しの合理的な理由になる。銀行の実際の財務状況とは無関係に、「他人が引き出すなら自分も引き出したほうがよい」という判断が連鎖する。行列という可視的な形で不安が表示されたことが、事態を加速させた。 同行は現金を確保して払い戻しに応じ、事実無根であることを説明した。騒ぎは年末年始をはさんで沈静化していった。

引き出しの規模

この騒ぎで生じた預金の流出額については、資料によって数値が異なる。 日本大学経済科学研究所紀要に掲載された取り付け騒ぎの研究は、佐賀銀行で前年同日比で180億円の引き出しが発生し、3万2000件の取引件数を記録したとしている。これは前年の同じ日と比較した増加分として算出された数値である。 一方、報道や解説記事では、引き出されたり解約されたりした預金は約500億円になったといわれる、とするものが多い。両者の差は、比較の基準(前年同日比の増加分か、期間中の総額か)や、対象とする期間の取り方の違いによるものと考えられる。 本記事では、算出根拠が明示されている前者の数値を本文の基準としつつ、後者の数値も併記した。いずれにせよ、地方銀行1行の平常時の資金移動としては桁違いの規模であったことは共通している。

騒ぎを広げた背景

なぜ信憑性のないメールがこれほどの騒ぎに発展したのか。前掲の研究は、いくつかの要因を挙げている。 第一に、当時の日本が不況下にあったこと。金融機関の破綻が現実の出来事として記憶されていた時期であり、「銀行は潰れないもの」という前提が失われていた。 第二に、年末という時期である。資金繰りが問題になりやすく、預金者が自分の資金の所在に敏感になる時期にあたっていた。 第三に、事件の数か月前に佐賀商工共済協同組合が実際に経営破綻していたことである。同じ県内で金融機関の破綻が現に起きていたという事実が、デマに現実味を与える働きをした。 これらの条件が重なったところに、匿名性が高く転送の容易な携帯メールという伝播経路が加わった。

刑事手続きの結末と教訓

2004年2月、佐賀県警察は最初にメールを送信したとされる20歳代の女性を、信用毀損の容疑で書類送検した。信用毀損罪は刑法233条に定められ、虚偽の風説を流布し、または偽計を用いて人の信用を毀損した者を処罰する規定である。 しかし検察は、嫌疑不十分として不起訴処分とした。理由は、取り付け騒ぎとメールとの間の因果関係を明らかにできないというものだった。1通のメールが転送を重ねて拡散する過程では、途中で内容を改変した者や、意図的に広めた者が介在しうる。最初の送信者の行為と、最終的に生じた結果との結びつきを法的に立証することは容易ではなかった。 この事件は、情報技術の発達によって風評被害が瞬時に広がる危険性を示した最初期の事例として位置づけられる。取り付け騒ぎの類型を整理した研究では、経営責任のない「失言・風評」を原因とする事例として、1973年の豊川信用金庫の取り付け騒ぎと並べて扱われている。両者はいずれも金融機関の経営が健全だった点で共通する。 その後、交流サイト(SNS)の普及によって情報の伝播はさらに高速化し、金融機関の危機管理広報において佐賀銀行の事例は繰り返し参照されている。

経過

  1. 2003年12月25日
    平成15年

    事件・事故 佐賀銀行の倒産を伝えるチェーンメールが広がり取り付け騒ぎが発生

    同日夕刻には店舗前に200人の行列ができた。前年同日比で約180億円の引き出しと3万2000件の取引が記録された。

  2. 2004年2月
    平成16年

    その他 20歳代の女性が信用毀損容疑で書類送検される

    刑法233条の信用毀損罪の適用が検討された。

  3. 2004年2月
    平成16年

    その他 嫌疑不十分により不起訴処分となる

    取り付け騒ぎとメールとの因果関係を立証できなかったことが理由とされた。

出典・公的資料

一次資料 1件 判決文・白書・調査報告書・法令など、原典にあたれる資料を掲載しています。

関連する法律用語

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レポート・記事などで本ページを参照する際は、以下の表記をご利用ください。

「佐賀銀行デマメール事件」事件JP、2026年9月8日閲覧。https://jiken.jp/cases/2003-saga-bank-chain-mail-run/

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更新履歴

  • 2026年8月20日 初版公開

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