笹子トンネル天井板落下事故

発生日 2012年12月2日(平成24年)
経過 発生から13年9か月
発生場所 山梨県 大月市笹子町(中央自動車道上り線 笹子トンネル)
種別 事故
状態 終結
被害 死者 9人  負傷者 2人
2012年(平成24年)12月2日午前8時3分ごろ、山梨県大月市笹子町の中央自動車道上り線・笹子トンネルで、天井板がおよそ138メートルにわたって落下した。1枚1.2トンの板およそ270枚の下敷きとなり、走行中の車3台に乗っていた9人が死亡、2人が負傷した。国土交通省の調査・検討委員会は、天井板を吊るアンカーボルトが接着剤の劣化などで抜け落ちたことを原因とし、2000年以降この区間で打音検査が行われていなかったと指摘した。高度成長期に建設されたインフラの老朽化を国民に突きつけた事故であり、道路法施行規則の改正による5年に1度の近接目視点検の義務化につながった。
笹子トンネル天井板落下事故を象徴する概念イラスト
※イメージ画像(生成AIによる概念イラストであり、実際の現場・関係者を写したものではありません)
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事故の発生

2012年(平成24年)12月2日午前8時3分ごろ、中央自動車道上り線の笹子トンネルで天井板が落下した。落下したのは東京側の出口から約1.5キロメートルの地点を中心とする約138メートルの区間で、天井板と中央の隔壁を合わせて約270枚、1枚あたりおよそ1.2トンのコンクリート板が路面へ崩れ落ちた。 日曜日の朝で交通量は多くなかったが、走行していた車3台が下敷きとなり、9人が死亡、2人が負傷した。落下の衝撃で車両から出火し、トンネル内には煙が充満した。 笹子トンネルは1977年(昭和52年)に開通した全長約4.7キロメートルのトンネルで、換気のためにトンネル上部に天井板を設けて排気路とする構造だった。この天井板は、トンネル頂部に埋め込まれたアンカーボルトから吊り金具で支えられていた。
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原因の究明

国土交通省は事故直後に調査・検討委員会を設置し、2013年(平成25年)6月18日に最終報告書を公表した。報告書は、天井板を吊るアンカーボルトが抜け落ちたことが直接の原因であるとし、その背景として複数の要因が重なっていたと結論づけた。 ひとつは施工時からの強度不足である。ボルト1本あたり4トンの耐荷重を設計値としていたが、事故後の調査で113本が4トン未満の力で抜けたことが確認された。もうひとつは、ボルトを固定していた接着剤の経年劣化である。開通から35年が経過しており、接着剤の性能がどれだけ保たれるかについての知見も不足していた。 そして点検の問題があった。天井板を吊る部分について、ハンマーで叩いて音の変化から異常を探る打音検査は、2000年(平成12年)以降この区間で行われていなかった。目視のみの点検では、天井裏の高所にあるボルトの緩みを捉えることができなかった。

刑事責任と民事訴訟

山梨県警察は2017年(平成29年)11月30日、中日本高速道路の当時の社長ら8人を業務上過失致死傷の疑いで書類送検した。しかし甲府地方検察庁は2018年3月23日、マニュアルに従った検査を行っていたとしても崩落を予見することは難しく、過失と結果の因果関係を立証できないとして、全員を不起訴とした。 検察審査会は2019年7月23日、点検作業の担当者2人について不起訴不当を議決したが、再捜査を経て2020年4月9日に嫌疑不十分で再び不起訴となり、刑事責任は問われないまま終わった。 民事では、遺族9人が中日本高速道路と子会社に損害賠償を求め、横浜地方裁判所は2015年12月22日、合計4億4,371万円の支払いを命じた。被告側が控訴しなかったため、この判決は2016年1月に確定している。ほかに負傷者との和解が成立した訴訟や、元役員個人の責任を問う訴訟があったが、後者は2017年5月30日の最高裁決定により請求が退けられた。

インフラ点検制度の転換

この事故は、高度成長期に集中して建設された道路構造物が一斉に更新の時期を迎えつつあるという問題を、社会に突きつけた。政府は2013年を「インフラメンテナンス元年」と位置づけ、同年にインフラ長寿命化基本計画を策定した。 2014年(平成26年)には道路法施行規則が改正され、トンネルや橋梁について5年に1度、近接目視による定期点検を行うことが義務づけられた。遠くから眺めるのではなく、点検者が構造物に近づいて自分の目で確かめることを求める規定であり、笹子トンネルで打音検査が行われていなかったことへの直接の応答である。 高速道路会社では2015年度から大規模更新・修繕を行うリニューアルプロジェクトが始まった。造ったものを使い続けるために計画的に手を入れるという考え方が、制度と予算の両面で定着していく契機となった。

復旧と天井板の撤去

事故から27日後の2012年12月29日、下り線を使った対面通行という形で暫定的に交通が確保された。上り線の復旧は2013年2月8日で、その際に天井板は撤去され、ジェットファンによる換気方式に変更された。同じ構造を持つ他のトンネルでも、天井板の撤去や補強が進められた。 事故現場となったトンネルの近くには慰霊碑が建てられ、毎年12月2日に追悼の行事が行われている。 天井板を吊り下げるという構造そのものが不適切だったわけではない。問題は、その構造が長期間にわたって健全であり続けるかどうかを確かめる仕組みが備わっていなかった点にある。事故から10年以上が経ち、点検の制度は整えられたが、更新に必要な費用と人手をどう確保するかという課題は残されている。

審理・経過の流れ

  1. 事件・事故 2012年12月2日
  2. 判決 2015年12月22日 +1,115日

経過

  1. 2012年12月2日
    平成24年

    事件・事故 笹子トンネル上り線で天井板が約138メートルにわたり落下

    約270枚のコンクリート板が落下し、車3台の乗員9人が死亡、2人が負傷した。

  2. 2013年2月8日
    平成25年

    その他 上り線が復旧し天井板は撤去される

    換気方式をジェットファンによるものへ変更した。下り線を使った対面通行での暫定復旧は2012年12月29日。

  3. 2013年6月18日
    平成25年

    その他 国土交通省の事故調査・検討委員会が最終報告書を公表

    アンカーボルトの脱落を直接の原因とし、施工時からの強度不足、接着剤の劣化、打音検査の未実施を挙げた。

  4. 2014年
    平成26年

    その他 道路法施行規則が改正され5年に1度の近接目視点検が義務化される

    トンネル・橋梁について、点検者が構造物に近づいて目視する定期点検が求められることとなった。

  5. 2015年12月22日
    平成27年

    判決 横浜地方裁判所が遺族への4億4,371万円の賠償を命じる

    被告側が控訴せず、2016年1月に判決が確定した。

    横浜地方裁判所

  6. 2017年11月30日
    平成29年

    その他 山梨県警察が高速道路会社の当時の社長ら8人を書類送検

    業務上過失致死傷の疑い。

  7. 2018年3月23日
    平成30年

    その他 甲府地方検察庁が全員を不起訴処分とする

    検察審査会の不起訴不当議決を経た再捜査でも、2020年4月9日に嫌疑不十分で再び不起訴となった。

出典・公的資料

一次資料 1件 判決文・白書・調査報告書・法令など、原典にあたれる資料を掲載しています。

関連する法律用語

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「笹子トンネル天井板落下事故」事件JP、2026年9月8日閲覧。https://jiken.jp/cases/2012-sasago-tunnel-ceiling-collapse/

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更新履歴

  • 2026年8月24日 初版公開

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