豊島産業廃棄物不法投棄事件 通称: 豊島事件

発生日 1990年11月16日(平成2年)
経過 発生から35年9か月
発生場所 香川県 小豆郡土庄町豊島
種別 その他
状態 終結
1990年(平成2年)11月16日、兵庫県警察が香川県小豆郡土庄町の豊島(てしま)で産業廃棄物処理業者を廃棄物処理法違反容疑で強制捜査し、瀬戸内海国立公園内の島に大量の産業廃棄物が不法投棄されていた実態が明らかになった。「ミミズの養殖」を名目に1978年から続いた投棄により、島には廃棄物と汚染土壌が堆積。住民が申請した公害調停は2000年6月6日に成立し、香川県知事が住民に謝罪して原状回復に合意した。搬出された廃棄物・汚染土壌は約91万トンにのぼり、国内最大級の産業廃棄物不法投棄事件として廃棄物処理法の度重なる改正につながった。
豊島産業廃棄物不法投棄事件を象徴する概念イラスト
※イメージ画像(生成AIによる概念イラストであり、実際の現場・関係者を写したものではありません)
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島に運び込まれた産業廃棄物

豊島は香川県小豆郡土庄町に属する瀬戸内海の島で、瀬戸内海国立公園の区域に含まれる。1970年代、この島の西端にある業者が有害産業廃棄物処理場の設置を申請したことに対し、島の住民は強く反対した。 その後、業者は「ミミズの養殖による土壌改良剤の製造」を名目とする事業として県の認可を得る。実態はこれと大きく異なり、1978年以降、豊島総合観光開発株式会社によって大量の廃棄物が島に持ち込まれ、投棄が続けられた。運び込まれたのは製紙汚泥、自動車の破砕くず(シュレッダーダスト)、廃油、廃プラスチックなどで、野焼きも行われた。 住民は悪臭、騒音、野焼きによる煤煙に長年苦しめられ、健康被害を訴える者も出た。国立公園の区域内でありながら、投棄は10年以上にわたって続いた。
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摘発と実態の判明

1990年(平成2年)11月16日、兵庫県警察が廃棄物処理法違反の容疑で強制捜査に着手した。容疑は、瀬戸内海国立公園内でミミズの養殖を騙って産業廃棄物を不法に投棄していたというものである。摘発の主体が香川県警ではなく兵庫県警だったのは、廃棄物の多くが兵庫県内の事業者から搬出されていたためだった。 摘発によって、島に堆積した廃棄物の量と性状が初めて公にされた。事件を受けて住民は直ちに「廃棄物対策豊島住民会議」を再発足させ、廃棄物を許可した県の責任を問い、原状回復を求める運動を本格化させた。 この事件で厳しく問われたのは、投棄した業者だけではなかった。事業を「ミミズの養殖」として扱い、産業廃棄物処理業としての規制を及ぼさなかった香川県の行政判断そのものが、住民運動の中心的な争点となっていく。

公害調停の成立

住民は司法の場ではなく、国の公害等調整委員会による公害調停の道を選んだ。損害賠償ではなく、島を元の状態に戻すこと(原状回復)を求めるには、当事者間の合意を形成する調停の枠組みが適していると判断されたためである。 調停は長期にわたった。中間合意を経て技術検討委員会が設置され、廃棄物をどのように処理するかについて専門的な検討が重ねられた。その結果、隣接する直島に中間処理施設を建設し、豊島から海上輸送して処理するという「直島処理案」が提案される。 2000年(平成12年)6月6日、第37回の調停期日において調停が成立した。この席で香川県知事は住民に対して謝罪し、県の責任を認めたうえで原状回復に取り組むことに合意した。住民が反対運動を始めてから調停成立まで、25年の歳月が流れていた。

廃棄物の搬出と処理

調停成立後、豊島から直島への廃棄物の海上輸送と中間処理が始まった。作業は当初の想定を超えて長期化する。掘削を進めるにつれて、想定より多くの廃棄物と、廃棄物によって汚染された土壌が確認されたためである。 搬出が完了したのは2017年(平成29年)3月28日だった。報道によれば、搬出された産業廃棄物と汚染土壌は合わせておよそ91万トンにのぼる。処理に要した期間は14年、費用は中間処理施設の建設費、輸送費、処理費を含めておよそ770億円とされる。直島の施設での処理作業はその後も続き、地下水の浄化についてはさらに数年を要する見通しが示された。 なお廃棄物の総量については、資料によって約91万トンとするものと約94万トンとするものがあり、集計の対象(廃棄物のみか、汚染土壌を含むか)によって数値が異なる。

制度への影響

豊島事件は、国内最大級の産業廃棄物不法投棄事件として、廃棄物行政のあり方に大きな影響を与えた。 第一に、産業廃棄物を排出した事業者の責任という考え方が強く意識されるようになった。処理を委託した先で不適正な処理が行われた場合に、排出事業者がどこまで責任を負うのかという論点は、その後の廃棄物処理法の改正で繰り返し扱われている。 第二に、都道府県による許可と監督の運用が問い直された。事業の名目と実態が乖離している場合に行政がどう対応すべきかという問題は、豊島で現実の被害として現れた。 第三に、原状回復の費用を誰が負担するかという問題である。投棄した業者に支払能力がない場合、費用は最終的に公費で賄われることになる。豊島の処理費約770億円という規模は、不法投棄を事後的に回復することの困難さを具体的な数字で示した。 現在、豊島は瀬戸内国際芸術祭の会場のひとつとしても知られる。島には事件の資料を伝える施設が置かれ、環境教育の場として活用されている。

経過

  1. 1978年
    昭和53年

    その他 豊島総合観光開発による廃棄物の搬入が始まる

    ミミズの養殖による土壌改良剤の製造を名目として、製紙汚泥やシュレッダーダストなどが島に持ち込まれた。

  2. 1990年11月16日
    平成2年

    事件・事故 兵庫県警察が廃棄物処理法違反容疑で強制捜査に着手

    瀬戸内海国立公園内での大量の不法投棄の実態が明らかになった。

  3. 2000年6月6日
    平成12年

    その他 公害等調整委員会の公害調停が成立

    第37回調停期日で香川県知事が住民に謝罪し、原状回復に合意した。

  4. 2017年3月28日
    平成29年

    その他 豊島からの廃棄物・汚染土壌の搬出が完了

    搬出量は約91万トン、処理期間は14年、費用は約770億円とされる。

出典・公的資料

一次資料 2件 判決文・白書・調査報告書・法令など、原典にあたれる資料を掲載しています。

  • 調査報告書
    香川県
    公害調停の段階区分(発端から申請、調停開始、中間合意、技術検討委員会、直島処理案、調停成立)の出典。
  • 調査報告書
    香川県 廃棄物対策課
    戦後最大級の不法投棄事件としての位置づけと処分地の現況を参照した。
  • 公的発表・広報
    日本経済新聞  2017年3月27日発行
    搬出完了日と搬出量・処理期間・費用の出典。
  • その他
    有斐閣Online
    事件の法的な位置づけの確認に用いた。

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「豊島産業廃棄物不法投棄事件」事件JP、2026年9月8日閲覧。https://jiken.jp/cases/1990-teshima-illegal-dumping/

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更新履歴

  • 2026年8月20日 初版公開

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