豊島産業廃棄物不法投棄事件 通称: 豊島事件

結末 1991年7月、神戸地裁姫路支部が会社に罰金50万円、経営者に懲役10月・執行猶予5年の有罪判決。2000年6月に公害調停が成立

発生日 1990年11月16日(平成2年) 1990年(平成2年)の事件 / 11月16日に起きた事件
経過 発生から35年11か月
発生場所 香川県 小豆郡土庄町豊島
種別 その他
状態 判決確定
  • 事件が変えた法律・制度国内最大級の産業廃棄物不法投棄事件として、排出事業者責任の考え方や都道府県の許可・監督のあり方が問い直され、廃棄物処理法の度重なる改正につながった。
  • 公害事件 — 四大公害と環境汚染県の許可を受けた業者が産業廃棄物を不法投棄した。2000年の公害調停で知事が指導監督の誤りを認めて謝罪し、廃棄物の搬出は2017年に完了した。
1990年(平成2年)11月16日、兵庫県警察が香川県小豆郡土庄町の豊島(てしま)で産業廃棄物処理業者の事業場を廃棄物処理法違反の容疑で強制捜査し、瀬戸内海国立公園内の島に大量の産業廃棄物が不法投棄されていた実態が明らかになった。業者は「ミミズによる土壌改良剤化処分」を名目に県の許可を得ていたが、1980年代からシュレッダーダストや廃油などを大量に持ち込み、野焼きを続けていた。住民が申請した公害調停は2000年6月6日に成立し、香川県知事は廃棄物の認定を誤り指導監督を怠ったことを認めて住民に謝罪し、県が原状回復を行うことになった。搬出された廃棄物・汚染土壌は約91万トンにのぼり、廃棄物処理法の見直しにつながった戦後最大級の不法投棄事件とされる。
豊島産業廃棄物不法投棄事件を象徴する概念イラスト
※イメージ画像(生成AIによる概念イラストであり、実際の現場・関係者を写したものではありません)
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島に運び込まれた産業廃棄物

豊島は香川県小豆郡土庄町に属する瀬戸内海の島で、瀬戸内海国立公園の区域に含まれる。1975年12月、島の西端に事業場を持つ豊島総合観光開発株式会社が、有害な産業廃棄物を扱う処理業の許可を県に申し出たことに対し、島の住民は署名や陳情、建設差止訴訟を起こすなどして強く反対した。 1977年9月、同社は事業内容を「ミミズによる土壌改良剤化処分」に変更すると申し出て、県は1978年2月、製紙汚泥などを扱う産業廃棄物処理業を許可した。ところが同社は1983年に金属くず商の許可を得ると、昭和50年代後半から1990年にかけて、シュレッダーダスト(廃プラスチック類など)や廃油、汚泥などの産業廃棄物を事業場に大量に運び込み、野焼きを続けた。県は立入検査を行っていたが、これらを有価物とする業者の主張を受け入れて廃棄物と認定せず、適切な指導監督を怠った。 住民は悪臭や野焼きの煙に長年苦しめられた。国立公園の区域内でありながら、大量の搬入は10年近く続いた。
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摘発と実態の判明

1990年(平成2年)11月16日、兵庫県警察が廃棄物処理法違反の容疑で事業場の強制捜査に着手した。翌1991年1月23日には経営者らが逮捕され、同年7月18日、神戸地方裁判所姫路支部は会社に罰金50万円、経営者に懲役10月・執行猶予5年の判決を言い渡した。 摘発によって、島に堆積した廃棄物の量と性状が初めて公になった。住民はすぐに「廃棄物対策豊島住民会議」を結成し、県の責任を問い、廃棄物の撤去を求める運動を本格化させた。県は1990年12月に同社の処理業の許可を取り消し、廃棄物の撤去などを命じたが、同社は事実上事業を廃止しており、膨大な量の廃棄物が島に残された。 この事件で厳しく問われたのは、投棄した業者だけではなかった。業者の主張を受け入れて廃棄物の認定を誤り、規制を及ぼさなかった香川県の行政判断そのものが、住民運動の中心的な争点となっていく。

公害調停の成立

1993年11月11日、豊島の住民438人は、県や業者、廃棄物を委託した排出事業者などを相手に、公害紛争処理法に基づく調停を申請した。住民は司法の場ではなく、国の公害等調整委員会による公害調停の道を選んだのである。損害賠償ではなく、島を元の状態に戻すこと(原状回復)を求めるには、当事者間の合意を形成する調停の枠組みが適していると判断されたためである。 調停は長期にわたった。中間合意を経て技術検討委員会が設置され、廃棄物をどのように処理するかについて専門的な検討が重ねられた。その結果、隣接する直島に中間処理施設を建設し、豊島から海上輸送して処理するという「直島処理案」が提案される。 2000年(平成12年)6月6日、第37回の調停期日において調停が成立した。成立後、真鍋武紀知事は豊島の住民に対し、県が廃棄物の認定を誤り、業者への適切な指導監督を怠った結果、深刻な事態を招いて長期にわたり不安と苦痛を与えたことを認めて謝罪した。調停条項では、県が2016年度末までに廃棄物等を島から搬出し、焼却・溶融処理は直島町内の施設で行うことなどが定められた。排出事業者のうち19社も解決金の支払いに応じている。住民が反対運動を始めてから調停成立まで、25年の歳月が流れていた。

廃棄物の搬出と処理

調停成立後、豊島から直島への廃棄物の海上輸送と中間処理が始まった。作業は当初の想定を超えて長期化する。掘削を進めるにつれて、想定より多くの廃棄物と、廃棄物によって汚染された土壌が確認されたためである。 搬出が完了したのは2017年(平成29年)3月28日だった。報道によれば、搬出された産業廃棄物と汚染土壌は合わせておよそ91万トンにのぼる。処理に要した期間は14年、費用は中間処理施設の建設費、輸送費、処理費を含めておよそ770億円とされる。直島の施設での処理作業はその後も続き、地下水の浄化についてはさらに数年を要する見通しが示された。 なお廃棄物の総量については、資料によって約91万トンとするものと約94万トンとするものがあり、集計の対象(廃棄物のみか、汚染土壌を含むか)によって数値が異なる。

制度への影響

豊島事件は、国内最大級の産業廃棄物不法投棄事件として、廃棄物行政のあり方に大きな影響を与えた。 第一に、産業廃棄物を排出した事業者の責任という考え方が強く意識されるようになった。処理を委託した先で不適正な処理が行われた場合に、排出事業者がどこまで責任を負うのかという論点は、その後の廃棄物処理法の改正で繰り返し扱われている。 第二に、都道府県による許可と監督の運用が問い直された。事業の名目と実態が乖離している場合に行政がどう対応すべきかという問題は、豊島で現実の被害として現れた。 第三に、原状回復の費用を誰が負担するかという問題である。投棄した業者に支払能力がない場合、費用は最終的に公費で賄われることになる。豊島の処理費約770億円という規模は、不法投棄を事後的に回復することの困難さを具体的な数字で示した。 現在、豊島は瀬戸内国際芸術祭の会場のひとつとしても知られる。島には事件の資料を伝える施設が置かれ、環境教育の場として活用されている。

審理・経過の流れ

  1. 事件・事故 1990年11月16日
  2. 逮捕 1991年1月23日 +68日
  3. 判決 1991年7月18日 +176日

経過

  1. 1978年2月1日
    昭和53年

    その他 香川県が「ミミズによる土壌改良剤化処分」の処理業を許可

    豊島総合観光開発に対し、製紙汚泥などを扱う産業廃棄物処理業を許可した。その後同社は金属くず商の許可を得て、シュレッダーダストなどを大量に搬入した。

  2. 1990年11月16日
    平成2年

    事件・事故 兵庫県警察が廃棄物処理法違反容疑で強制捜査に着手

    瀬戸内海国立公園内での大量の不法投棄の実態が明らかになった。

  3. 1991年1月23日
    平成3年

    逮捕 兵庫県警察が経営者らを逮捕

  4. 1991年7月18日
    平成3年

    判決 神戸地方裁判所姫路支部が業者と経営者に有罪判決

    会社に罰金50万円、経営者に懲役10月・執行猶予5年。

    神戸地方裁判所姫路支部

  5. 1993年11月11日
    平成5年

    その他 豊島住民438人が公害調停を申請

  6. 2000年6月6日
    平成12年

    その他 公害等調整委員会の公害調停が成立

    第37回調停期日で香川県知事が住民に謝罪し、原状回復に合意した。

  7. 2017年3月28日
    平成29年

    その他 豊島からの廃棄物・汚染土壌の搬出が完了

    搬出量は約91万トン、処理期間は14年、費用は約770億円とされる。

出典・公的資料

一次資料 3件 判決文・白書・調査報告書・法令など、原典にあたれる資料を掲載しています。

  • 調査報告書
    香川県
    発端から調停成立までの経緯(許可の経過、金属くず商の許可と搬入、県の認定の誤り、兵庫県警の摘発、刑事判決、許可取消と措置命令、調停申請、調停成立と知事の謝罪、調停条項)と年表の出典。
  • 調査報告書
    香川県
    1991年1月23日の兵庫県警による経営者らの逮捕、同年7月18日の神戸地裁姫路支部の有罪判決を確認
  • 調査報告書
    香川県 廃棄物対策課
    戦後最大級の不法投棄事件としての位置づけと処分地の現況を参照した。
  • その他
    日本経済新聞  2017年3月27日発行
    搬出完了日と搬出量・処理期間・費用の出典。
  • その他
    有斐閣Online
    事件の法的な位置づけの確認に用いた。

さらに調べるには

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「豊島産業廃棄物不法投棄事件」事件JP、2026年10月27日閲覧。https://jiken.jp/cases/1990-teshima-illegal-dumping/
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更新履歴

  • 2026年10月19日 経営者らの逮捕日(1991年1月23日)を香川県の年表に基づき追記
  • 2026年10月5日 ステータスを「終結」→「判決確定」に訂正(刑事裁判で判決が確定しているため。無罪確定を含む)
  • 2026年9月29日 事実精度監査:不法投棄の時期(1978年は許可の年で大量搬入は1980年代)を香川県の経緯資料に基づき訂正、摘発主体に関する出典のない推測を削除、刑事判決・調停申請・県の謝罪の内容を追記
  • 2026年8月20日 初版公開

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