「生きてゐる兵隊」筆禍事件
| 発生日 | 1938年2月18日(昭和13年) |
|---|---|
| 経過 | 発生から88年6か月 1938年9月5日の確定から88年 |
| 発生場所 | 東京都 東京(中央公論社・内務省) |
| 種別 | その他 |
| 状態 | 判決確定 |
1938年(昭和13年)2月18日、雑誌『中央公論』3月号に掲載予定だった石川達三の小説「生きてゐる兵隊」について、内務省が発売禁止処分を通告した。同作は日中戦争下の南京で取材した内容を基に、日本軍将兵による非戦闘員への暴行などを描いており、著者と編集者は新聞紙法違反で起訴され、石川は禁固4か月・執行猶予3年の有罪判決を受けた。
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執筆の経緯
作家の石川達三は1937年、中央公論社の特派員として、日中戦争下の中国・南京周辺に派遣された。南京陥落直後の現地で見聞きした内容をもとに、日本軍将兵の実態を描いた小説「生きてゐる兵隊」を執筆し、雑誌『中央公論』1938年3月号への掲載が決まった。作中には、戦闘の凄惨さに加え、非戦闘員への暴行についての描写が含まれていた。石川達三は、この作品以前にも移民問題を扱った小説『蒼氓』で第1回芥川賞を受賞するなど、社会派の題材に正面から取り組む作家として知られており、「生きてゐる兵隊」もその延長線上に位置づけられる作品だった。
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同時期の言論統制の状況
日中戦争が本格化した1937年から1938年にかけて、政府は新聞紙法・出版法などを根拠に、戦況や軍の行動に関する報道・出版物への統制を強化していった。「生きてゐる兵隊」筆禍事件は、こうした統制強化の流れの中で、著名な文芸誌に掲載された小説作品が摘発対象となった点で、当時大きな注目を集めた。
検閲と発売禁止
検閲を警戒した編集部は、該当箇所に大幅な伏字を施し、最終2章を丸ごと削除したうえで掲載したが、内務省は1938年2月18日、同誌掲載号の発売禁止を通告した。中央公論社の編集責任者もまた、著者とともに刑事責任を問われており、雑誌メディア側が掲載内容について負うべき法的責任のあり方も、あわせて争点となった。
起訴と判決
石川達三と中央公論社の編集責任者は、新聞紙法違反の容疑で起訴された。石川は公判で、事実に基づいて書いたものであり反軍的な意図はなかったと述べたが、裁判所はこれを退け、石川に禁固4か月・執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。この事件を含む一連の言論弾圧は、日中戦争の長期化とともに強化されていく戦時統制の先駆けとなり、以後、戦争の実態に触れる文学・報道作品への検閲は一層厳格化していくこととなった。
作品の戦後の位置づけ
「生きてゐる兵隊」は、日中戦争下の南京周辺における日本軍の実態を、従軍作家が同時代的に記録した数少ない作品として、戦後は文学史・戦争史の双方から重要視されるようになった。伏字部分を復元した完全版は、戦後にあらためて刊行され、戦時検閲の実態を検証する資料としても利用されている。戦後、石川達三は社会派作家としての地位を確立し、日本文芸家協会の理事長も務めるなど文壇の中心的存在となった。
事件の位置づけ
本件は、日中戦争下における言論・出版統制の強化を象徴する筆禍事件として知られ、日本の戦時検閲史・報道史における代表的な事例として、後年の文学研究でたびたび取り上げられている。伏字部分を復元した完全版は、戦後になって刊行された。
南京取材の内容
石川達三は、南京陥落からまもない現地に特派員として入り、実際の戦闘や占領直後の混乱の様子を可能な限り取材した。小説という形式を取りながらも、記者としての取材経験に基づく描写であった点が、事後に「事実に基づく記録」として扱われ、検閲当局が特に問題視する要因になったとされる。
経過
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1938年2月18日
昭和13年その他 内務省が「生きてゐる兵隊」掲載号の発売禁止を通告
雑誌『中央公論』3月号の発売が禁止された。
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1938年9月
昭和13年判決 石川達三に禁固4か月・執行猶予3年の有罪判決が確定
新聞紙法違反で起訴された石川達三に有罪判決が言い渡された。
出典・公的資料
一次資料 1件 判決文・白書・調査報告書・法令など、原典にあたれる資料を掲載しています。
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その他
フリー百科事典 Wikipedia
- 調査報告書
関連する法律用語
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「「生きてゐる兵隊」筆禍事件」事件JP、2026年9月8日閲覧。https://jiken.jp/cases/1938-ikiteiru-heitai-censorship-incident/
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更新履歴
- 2026年8月19日 初版公開
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