筋弛緩剤点滴事件 通称: 北陵クリニック筋弛緩剤事件

結末 2008年3月、殺人1件・殺人未遂4件で男の無期懲役が確定した。男は無実を訴えて再審を請求したが、2019年までに退けられた

発生日 2000年2月2日(平成12年) 〜 2000年11月24日 2000年(平成12年)の事件 / 2月2日に起きた事件
経過 発生から26年8か月
発生場所 宮城県 仙台市泉区(北陵クリニック)
種別 殺人
状態 判決確定
被害 死者 1人  負傷者 4人
2000年(平成12年)2月から11月にかけて、宮城県仙台市泉区の北陵クリニックで、准看護師の男が点滴を受けていた患者5人に筋弛緩剤を注入し、89歳の女性を死亡させ、ほかの4人を殺害しようとしたとされる事件。男は殺人と殺人未遂の罪で起訴され、公判では無罪を主張したが、2004年に仙台地裁で無期懲役の判決を受け、2008年に確定した。男は服役しながら再審を請求したが退けられ、支援者は第2次の再審請求を準備中としている。
筋弛緩剤点滴事件を象徴する概念イラスト
※イメージ画像(生成AIによる概念イラストであり、実際の現場・関係者を写したものではありません)
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事件の概要

北陵クリニックは、仙台市泉区高森にあった医療法人の医療施設で、1991年(平成3年)10月に開設された。男は1999年2月にこのクリニックに就職し、2000年12月4日に退職するまで准看護士(当時の呼称)として働いていた。 確定判決によると、男は2000年2月2日から同年11月24日までの間に、クリニックで点滴を受けていた患者5人に対し、未必の殺意をもって、点滴の管から筋弛緩剤「マスキュラックス」の溶液を注入し、容体を急変させた。マスキュラックスは呼吸を抑える作用のある薬で、成分はベクロニウムという。薬事法上の「毒薬」に当たる。5人のうち1人が死亡し、残る4人は命を取り留めた。罪名は殺人1件と殺人未遂4件である。
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5人の被害

判決が認定した被害者は、当時1歳の女児、11歳の女児、4歳の男児、89歳の女性、45歳の男性の5人である。1歳の女児の事件は2000年2月で、11歳の女児は同年10月31日に腹痛や吐き気を訴えてクリニックの小児科を受診し、その後に容体が急変した。残る3件は同年11月に起きたとされる。 89歳の女性は窒息死した。11歳の女児は意識不明の状態になった。ほかの3人も呼吸困難などの症状が出たが、救命措置で助かった。 2001年1月、男は11歳の女児に対する殺人未遂の疑いで逮捕され、その後、殺人などの疑いでも逮捕された。男は逮捕の直後は容疑を認めたが、4日目から否認に転じた。クリニックは2001年3月に休院し、2002年3月に廃院となった。

裁判と確定

第1回公判は2001年7月11日に仙台地裁で開かれた。男は無罪を主張した。弁護側は、そもそも筋弛緩剤が投与された事実はなく、患者の容体の急変は病気や薬の副作用などによるものだと主張した。主な争点は、大阪府警科学捜査研究所が、患者の血清や点滴の溶液などからベクロニウムを検出したとする鑑定の信用性だった。 公判は156回に及び、2004年3月30日、仙台地裁は男に無期懲役を言い渡した。2006年3月22日に仙台高裁が控訴を棄却し、2008年2月25日、最高裁第三小法廷(藤田宙靖裁判長)も裁判官全員一致で上告を棄却した。最高裁は、男がマスキュラックスを点滴ルートで投与したとした判断に、重大な事実誤認は見当たらないとした。無期懲役は同年3月12日に確定した。

再審請求

男は服役しながら無実を訴え、2012年2月10日、仙台地裁に再審を請求した。新しい証拠として、科捜研の鑑定が検出の根拠とした「258」という値のイオンは、ベクロニウムからは検出されないとする専門家の鑑定などを出した。 仙台地裁は2014年3月25日付で請求を棄却した。2018年2月28日、仙台高裁(嶋原文雄裁判長)も即時抗告を棄却した。高裁は、11歳の女児の症状はミトコンドリア病によるとする医師の意見書についても、筋弛緩剤の効果によるとの判断に合理的な疑いは生じないとした。弁護団は特別抗告したが、最高裁は2019年にこれを退け、第1次の再審請求は終わった。 男を支援する日本国民救援会は、2026年10月時点で、第2次の再審請求を準備中と説明している。第2次の請求が裁判所に申し立てられたことは確認されていない。

事件後の対応

2001年1月、厚生労働省・宮城県・仙台市は薬事法に基づいてクリニックへ立ち入り検査をした。その結果、事件の前は毒薬が施錠設備のない場所に保管され、在庫の数量も定期的に管理されていなかったことが分かった。 厚生労働省は2001年1月11日と同年4月23日に、毒薬などの保管管理の徹底を求める通知を都道府県などに出した。4月の局長通知は、宮城県内の医療機関での事件を踏まえ、毒薬の施錠保管、数量の管理、受け払いの記録と定期的な点検などを指導するよう求めた。これは当時の薬事法の規定に基づく指導の徹底で、本件をきっかけとした法改正は確認されていない。

審理・経過の流れ

  1. 事件・事故 2000年2月2日
  2. 事件・事故 2000年10月31日 +272日
  3. 事件・事故 2000年11月 +1日
  4. 逮捕 2001年1月6日 +66日
  5. 公判 2001年7月11日 +186日
  6. 判決 2004年3月30日 +993日
  7. 判決 2006年3月22日 +722日
  8. 判決 2008年2月25日 +705日

経過

  1. 2000年2月2日
    平成12年

    事件・事故 1歳の女児の容体が急変(判決が認定した最初の事件)

    確定判決は、この日から11月24日までに患者5人へ筋弛緩剤が注入されたと認定した

  2. 2000年10月31日
    平成12年

    事件・事故 小児科を受診した11歳の女児の容体が急変

    女児は意識不明の状態になった

  3. 2000年11月
    平成12年

    事件・事故 4歳の男児、89歳の女性、45歳の男性の容体が急変

    89歳の女性が窒息死した

  4. 2001年1月6日
    平成13年

    逮捕 准看護師の男が11歳の女児に対する殺人未遂の疑いで逮捕される

    男は逮捕直後は容疑を認めたが、4日目から否認に転じた

  5. 2001年4月23日
    平成13年

    その他 厚生労働省が毒薬等の保管管理の徹底を求める局長通知

    クリニックへの立ち入り検査の結果を踏まえた指導の徹底

  6. 2001年7月11日
    平成13年

    公判 仙台地裁で初公判

    男は無罪を主張した

    仙台地方裁判所

  7. 2004年3月30日
    平成16年

    判決 仙台地裁が無期懲役の判決

    公判は156回に及んだ

    仙台地方裁判所

  8. 2006年3月22日
    平成18年

    判決 仙台高裁が控訴を棄却

    仙台高等裁判所

  9. 2008年2月25日
    平成20年

    判決 最高裁が上告を棄却

    無期懲役は3月12日に確定した

    最高裁判所第三小法廷 (事件番号: 平成18年(あ)第1010号)

  10. 2012年2月10日
    平成24年

    その他 男が仙台地裁に再審を請求

    鑑定の根拠とされたイオンの値を争う専門家の鑑定などを新証拠とした

    仙台地方裁判所

  11. 2014年3月25日
    平成26年

    その他 仙台地裁が再審請求を棄却

    仙台地方裁判所

  12. 2018年2月28日
    平成30年

    その他 仙台高裁が即時抗告を棄却

    新たな鑑定や意見書に明白性はないと判断した

    仙台高等裁判所 (事件番号: 平成26年(く)第24号)

  13. 2019年
    平成31年

    その他 最高裁が特別抗告を棄却し、第1次再審請求が終わる

    最高裁判所

出典・公的資料

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「筋弛緩剤点滴事件」事件JP、2026年10月31日閲覧。https://jiken.jp/cases/2000-sendai-hokuryo-clinic-muscle-relaxant/
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更新履歴

  • 2026年10月31日 初版公開

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